なぜお酒を「ちゃんぽん」すると悪酔いすると言われるのか——順番も種類も、じつは関係ない
ビールにワイン、締めにウイスキー。「ちゃんぽんすると悪酔いする」は日本でも海外でも語られる戒めだ。だが順番を変えても種類を混ぜても二日酔いは変わらないという研究がある。本当の犯人は組み合わせではなく、飲んだ純アルコールの総量とペースにあった。その仕組みを事実に沿って読み解く。
バーの帰り道、「今日はビールにワイン、締めにウイスキーまでいったから悪酔いした」と反省した経験はないだろうか。日本では古くから「お酒をちゃんぽん(複数の種類を混ぜて飲むこと)すると悪酔いする」と言われてきた。似た戒めは海外にもあり、欧州には「ビールのあとにワインなら大丈夫、逆はだめ」という言い伝えすらある。だが悪酔いは、本当に酒の"組み合わせ"のせいなのだろうか。
「順番」を変えても、二日酔いは軽くならなかった
この言い伝えを正面から検証した研究がある。ドイツのヴィッテン/ヘルデッケ大学と英ケンブリッジ大学が行い、2019年に米国の臨床栄養学専門誌『American Journal of Clinical Nutrition』に発表されたものだ。19〜40歳の90人を、①ビール→ワイン、②ワイン→ビール、③どちらか一方のみ、の3グループに分け、翌日の二日酔いの重さを比べた。
結果は、いずれのグループも差なし。飲む順番を変えても、種類を混ぜても、二日酔いの強さは変わらなかった。翌日のつらさを予測できたのは「飲んでいる最中にどれだけ酔ったと感じたか」と「嘔吐したかどうか」だけだったという。検証されたのはビールとワインの組み合わせだが、後述するように、酔いの本当の主役はそもそも酒の種類ではない。少なくとも「順番の縁起担ぎ」に科学的な後ろ盾はなさそうだ。
酔いを決めるのは、結局「純アルコール量」
酔いや二日酔いの主因は、飲んだ酒の種類ではなく、体に入った純アルコールの総量だ。肝臓がアルコールを分解する速度はほぼ一定で、種類を変えたところで処理が速くなるわけではない。つまり「ちゃんぽんそのもの」が体に特別な負担をかけるという科学的根拠は、いまのところ乏しいと言ってよい。
それでも「悪酔いした」と感じる理由
では、なぜちゃんぽんは悪者にされ続けるのか。犯人は混ぜ方そのものではなく、飲み方に潜んでいる。
ひとつは、ペースと総量を見失うこと。ビール、サワー、ハイボール、ワインと味が変わるたびに新鮮に感じ、つい杯が進む。度数の異なる酒を行き来すると、自分がいまどれだけ飲んだのかも把握しづらい。結果として、一種類で通すより総量が増えやすい。
もうひとつは酒質の差だ。ウイスキーや赤ワインのような色の濃い酒には、二日酔いを重くするとされる「コンジナー」(発酵や熟成で生じる副成分)が多く含まれる。色の薄いウォッカやジンと飲み比べれば、体感の差が生まれる。加えて、甘いカクテルや炭酸割りは濃さを感じにくく、いつの間にかペースが上がりやすい。
まとめ:悪いのは「混ぜること」ではない
ちゃんぽんが悪酔いを生むのではなく、ちゃんぽんによって飲みすぎることが悪酔いを生む——これが現時点での穏当な結論だ。裏を返せば、種類を絞れば安心というわけでもない。大切なのは総量とペースを意識し、あいだに水(チェイサー)を挟むこと。順番の縁起を担ぐより、その一杯がトータルで何杯目かを気にするほうが、翌朝はずっと楽になるはずだ。
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