なぜウイスキーは「シングル」「ダブル」という単位で数えるのか
バーで当たり前のように使う「シングル」「ダブル」。この不思議な数え方はどこから来たのか。指で量った時代の名残、日本やアメリカの30ml、イギリスの厳格な計量法、そして「シングルなら安心」という思い込みの落とし穴まで、一杯の量をめぐる話を読み解く。
バーのカウンターで「シングルで」「ダブルで」と告げる——ウイスキー好きにはおなじみのやり取りだ。だが冷静に考えると、酒を「1」や「2」で数えるのは妙な話でもある。ビールを「シングル」とは言わないし、コーヒーで使う「ダブル」とも意味が違う。なぜウイスキーはこの独特の単位で注がれるのだろうか。
「指」で量っていた時代の名残
シングル・ダブルという言い方の由来については諸説あるが、よく語られるのが「指」を使った計量だ。グラスの底に指を横にあて、指1本分の高さまで注ぐと、ずんぐりしたグラスならおおよそ30mlになる。これが「ワンフィンガー」、つまりシングル。指2本分ならその倍で「ダブル」というわけだ。英語圏でも量の目安を "a finger of whisky" と表現することがあり、計量器具が普及する前、目分量で手早く注ぐ知恵だったと考えられている。ただしグラスの太さで大きく変わるため、あくまで俗説的な目安であって、厳密な定義ではない点は押さえておきたい。
日本とアメリカの「30ml」
現在の日本のバーでは、シングルを30ml、ダブルをその倍の60mlとするのが一般的だ。アメリカでも1オンス(約30ml)を一杯の基準とする店が多い。きっちり量るために使われるのが、砂時計のような形をした「ジガー」と呼ばれる計量カップである。ジガーという言葉はもともと帆船のいちばん小さなマストを指し、そこから水夫に配られる酒の分量やそのカップを意味するようになったと言われる。片側30ml・反対側45mlといった二段構えのものが多く、一杯の量を素早く正確に測れる道具として今も現役だ。
イギリスでは「量」が法律で決まっている
面白いのは、イギリスではウイスキーやジン、ラム、ウォッカの一杯の量が法律(度量衡法)で定められていることだ。パブでの1ショットは25mlか35mlのどちらかと決められ、店はどちらかを選んで統一し、その量をメニューなどに明示しなければならない。政府の刻印が入った計量器やオプティックで量る仕組みだ。日本の「シングル=30ml」のような慣習とは違い、消費者保護のための厳格なルールになっている。イギリスのパブで頼んだ一杯が思ったより少なく感じるのは、この25ml基準のためかもしれない。
「シングルだから安心」とは限らない
シングル・ダブルはあくまで「液体の量」の話であって、摂取するアルコールの量とは別物だ。同じシングル30mlでも、アルコール度数40%の定番ボトルと、加水しないカスクストレングスの一杯とでは、体に入るアルコール量が大きく違う。

たとえば度数の高い一本をシングルで頼んでも、40%のウイスキーをダブルで飲むのに近いアルコールを摂ることになる。「シングルだから軽い」と油断せず、度数まで意識するのが大人の飲み方だ。数え方の背景を知れば、次の一杯の頼み方も少し変わってくるはずである。
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