なぜお酒(ウイスキー)を飲むと、鼻がつまる・くしゃみ・じんましんが出る人がいるのか——「アルコール不耐症」とヒスタミンの話
お酒を飲むと鼻がつまる、くしゃみやじんましんが出る——多くは「アレルギー」ではなく、処理しきれずに起きる「不耐」の反応だ。症状の見分け方から、血管拡張・ヒスタミン・体質という三つのしくみ、その場の対処までまとめた。
ウイスキーを一杯やると鼻がつまる。くしゃみが止まらない。腕や首がぽつぽつと赤くなり、かゆくなる——「風邪でもないのに」「これはウイスキーのアレルギーだろうか」と不安になる人は少なくない。じつはこうした反応の多くは、アルコールそのものへの「アレルギー」ではなく、体がアルコールをうまく処理しきれずに起きる「不耐(ふたい)」の反応だ。
ここではまず症状から自分のタイプの見当をつけ、続いて背景にある三つのしくみを読み解く。最後に、症状が出たときの対処と、次に飲むときの工夫までまとめる。
まず、症状で見分ける——「不耐」「アレルギー」「すぐ受診」
同じ「お酒を飲むと出る症状」でも、背景はいくつかに分かれる。おおまかな見分け方は次のとおりだ。
アルコール不耐のサイン(いちばん多い)……クリーブランド・クリニックはアルコール不耐を「遺伝性の代謝の問題」と位置づけ、顔・首・胸の紅潮、吐き気・嘔吐、動悸、低血圧、ずきずきする頭痛やだるさ、鼻づまり、下痢、喘息の悪化を症状として挙げている。要は、免疫の暴走ではなく「処理が追いつかない」状態だ。
アレルギー寄りのサイン……発疹・じんましん、強いかゆみ、腫れ、激しい腹痛。不耐にくらべて痛みや不快感が強く出やすいとされる。ただし後述するとおり、アルコールそのものへの真のアレルギーはごくまれで、実際には不耐(とくに次に述べるヒスタミン)でもじんましんは出うる。症状名だけでは切り分けられない。
すぐ受診すべきサイン……ふだんは出ない息苦しさ、全身に広がるじんましん、唇やまぶた・のどの腫れ、意識が遠のく感じ。これらは重いアレルギー反応の可能性があり、我慢して様子を見る場面ではない(もともと喘息のある人が軽く悪化するのは不耐でも起こりうるが、ふだんと違う呼吸のつらさなら受診したい)。米国アレルギー・喘息・免疫学会(AAAAI)のサイトに載る専門家Q&Aでも、飲酒でじんましんや血管性浮腫(腫れ)が出て、しかも回を追って症状が重くなっているケースについては、原因検索とあわせてアドレナリン自己注射薬の処方が挙げられている。
では、なぜこうした反応が起きるのか。しくみは大きく三つある。
しくみ① 血管が広がって、鼻の内側がむくむ
アルコールには血管を広げる(血管拡張)作用がある。顔がぽっと赤くなるのと同じことが、鼻の粘膜の内側でも起きている。鼻の中は細かい血管が密に走った組織で、そこが充血して粘膜がふくらむと、空気の通り道が狭くなる。これが「酒を飲むと鼻がつまる」のいちばんわかりやすい正体だ。
飲むと体がぽかぽかと温かく感じるのも同じ血管拡張のしわざで、なぜウイスキーを飲むと体が温まるのかで扱ったメカニズムと地続きになっている。
このタイプは、飲んだ量にきれいに比例しやすい。一杯目より三杯目でつらくなるなら、まず疑うべきはここだ。
しくみ② 「ヒスタミン」が処理しきれず、あふれる
花粉症の薬でおなじみの「抗ヒスタミン」。その相手であるヒスタミンは、くしゃみ・鼻水・かゆみ・じんましんを引き起こす体内物質だ。お酒は、外から入れる量と体内で片づける量の両側から、このヒスタミンを増やす(体質がさらに上乗せする三つ目の経路は、しくみ③で扱う)。
ひとつは、飲みもの自体にヒスタミンが含まれていること。発酵や熟成の過程で生じるため、赤ワインやビールにとくに多い。蒸留酒であるウイスキーは、蒸留の段階でその大半が置き去りにされるため、ヒスタミンの量という点ではワインやビールよりは少ないと考えられている。
もうひとつが、体の側で「分解が追いつかない」問題だ。食べものや飲みものから入ったヒスタミンは、おもに小腸のDAO(ジアミンオキシダーゼ)という酵素で分解される。ところがアルコールを飲むと、この分解が追いつかなくなりやすい。アルコールやその分解産物であるアセトアルデヒドがDAOの働きを鈍らせるためと説明されることが多い(近年は異論もあり、機序そのものは確定していない)。
ただ、しくみはどうあれ「飲酒で体内のヒスタミンが上がる」こと自体は広く認められている。入ってくるヒスタミンは増え、片づけるほうは追いつかない——こうして血中のヒスタミンがあふれ、くしゃみや鼻づまり、肌のかゆみ・じんましんとして噴き出す。もともとDAOの働きが弱い「ヒスタミン不耐」の傾向がある人ほど、少量の酒でも症状が出やすい。飲むとじんましんが出るタイプの人は、まずこの経路を疑うことになる。
「ヒスタミンの少ない酒」はどれか——数字で語れないのが実情
「ヒスタミンの少ない酒に替えれば楽になるのでは」と考えるのは自然な発想で、実際にウェブ上には酒類ごとのヒスタミン量を並べた一覧が数多くある。ただし、ここは正直に書いておきたい。蒸留酒については、信頼できる定量データが驚くほど乏しい。
飲料中の生体アミン(ヒスタミンを含む一群の物質)に関する学術レビューを見ても、測定値が並ぶのはワイン・ビール・コーヒー・茶といった発酵飲料や非発酵飲料までで、ウイスキーやブランデー、ウォッカといった蒸留酒の数値はそもそも扱われていないことが多い。ネット上で見かける「ウイスキーは◯mg/L」といった具体的な数字は、出典をたどると根拠が示されていないものが少なくない。
そのうえで、生成のしくみから言えることを整理するとこうなる。
- 原理的に多くなりやすいのは、発酵液由来のアミンがそのまま残るもの……赤ワイン、ビール、シードル、そしてポートやシェリーのような酒精強化ワイン。生体アミンは発酵中に微生物が作るので、蒸留という「ふるい」を通らないかぎり瓶の中に残る。
- 原理的に少なくなりやすいのは、蒸留を経たもの……ヒスタミンは蒸留で大部分が留出せずに残される。ウォッカやジンのような無色透明のスピリッツがもっともクリーンと考えられる。
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