なぜお酒(ウイスキー)を飲むと、鼻がつまる・くしゃみ・じんましんが出る人がいるのか——「アルコール不耐症」とヒスタミンの話
お酒を飲むと鼻がつまる、くしゃみやじんましんが出る——多くは「アレルギー」ではなく、アルコールを処理しきれない「不耐」の反応だ。血管拡張・ヒスタミン・お酒に弱い体質という三つのしくみから、その正体と付き合い方を読み解く。
ウイスキーを一杯やると鼻がつまる。くしゃみが止まらない。腕や首がぽつぽつと赤くなり、かゆくなる——「風邪でもないのに」「これはアレルギーだろうか」と不安になる人は少なくない。じつはこうした反応の多くは、アルコールそのものへの「アレルギー」ではなく、体がアルコールをうまく処理しきれずに起きる「不耐(ふたい)」の反応だ。ここではその正体を三つのしくみに分けて読み解く。読み終えるころには、自分の症状がどのタイプに近いのか、どう付き合えばいいのかの見当がつくはずだ。
しくみ① 血管が広がって、鼻の内側がむくむ
アルコールには血管を広げる(血管拡張)作用がある。顔がぽっと赤くなるのと同じことが、鼻の粘膜の内側でも起きている。鼻の中は細かい血管が密に走った組織で、そこが充血して粘膜がふくらむと、空気の通り道が狭くなる。これが「酒を飲むと鼻がつまる」のいちばんわかりやすい正体だ。飲むと体がぽかぽかと温かく感じるのも同じ血管拡張のしわざで、なぜウイスキーを飲むと体が温まるのかで扱ったメカニズムと地続きになっている。
しくみ② 「ヒスタミン」が処理しきれず、あふれる
花粉症の薬でおなじみの「抗ヒスタミン」。その相手であるヒスタミンは、くしゃみ・鼻水・かゆみ・じんましんを引き起こす体内物質だ。お酒はこのヒスタミンを二つの経路で増やす。
ひとつは、飲みもの自体にヒスタミンが含まれていること。発酵や熟成の過程で生じるため、赤ワインやビールにとくに多い。蒸留酒であるウイスキーは、蒸留の段階でその大半が置き去りにされるため、ヒスタミンの量という点ではワインやビールよりは少ない。ただし「ゼロ」ではなく、樽での長期熟成のあいだに微生物の働きなどで一部が新たに生じるため、ウォッカやジンのような無色透明の酒ほどクリーンではない——ちょうど中間くらいの立ち位置にある。
もうひとつが、体の側で「分解が追いつかない」問題だ。食べものや飲みものから入ったヒスタミンは、おもに小腸のDAO(ジアミンオキシダーゼ)という酵素で分解される。ところがアルコールを飲むと、この分解が追いつかなくなりやすい。アルコールやその分解産物であるアセトアルデヒドがDAOの働きを鈍らせるためと説明されることが多い(近年は異論もあり、機序そのものは確定していない)。ただ、しくみはどうあれ「飲酒で体内のヒスタミンが上がる」こと自体は広く認められている。入ってくるヒスタミンは増え、片づけるほうは追いつかない——こうして血中のヒスタミンがあふれ、くしゃみや鼻づまり、肌のかゆみ・じんましんとして噴き出す。もともとDAOの働きが弱い「ヒスタミン不耐症」の傾向がある人ほど、少量の酒でも症状が出やすい。
しくみ③ 「お酒に弱い体質」が、反応を増幅する
日本人を含む東アジアの人には、アルコールの分解にかかわる酵素ALDH2の働きが生まれつき弱い・欠けている人が多い(日本人のおよそ4割とも言われる)。この体質だと、飲んだあとにアセトアルデヒドが一気にたまりやすい。アセトアルデヒドは、体内の「肥満細胞(マストセル)」を刺激して、ヒスタミンそのものを放出させることも知られている。
つまり、お酒で顔が真っ赤になる「フラッシング」タイプ(体質的にお酒に弱い人)は、鼻づまりやくしゃみ、じんましんも一緒に出やすい。顔の赤みと、鼻や肌の反応とが、じつは同じアセトアルデヒドという一本の糸でつながっているわけだ。この体質そのものの詳しい話はなぜ一杯で顔が真っ赤になる人がいるのかにゆずる。
「アレルギー」と「不耐」は違う
ここまで見てきた症状の多くは、免疫が特定の物質を敵とみなして攻撃する本当の「アレルギー」ではなく、処理能力を超えて起きる「不耐」の反応だ。アルコールそのものに対する真のアレルギー(IgEという抗体が関わる反応)は、ごくまれとされる。まれに、原料や添加物——たとえばワインの亜硫酸塩(サルファイト)など——に反応しているケースもあるが、いずれにせよ、その成分を多く含む飲みものを避ける・量を減らすのが基本の対処になる。
ただし、飲んだ直後に息苦しさ、全身のじんましん、唇やまぶたの腫れといった強い症状が出る場合は、まれではあるが重いアレルギー反応の可能性もある。そのときは我慢せず、医療機関を受診してほしい。
まとめ——サインを読んで、うまく付き合う
酒で鼻がつまり、くしゃみやじんましんが出るのは、①血管が広がって粘膜がむくむ、②ヒスタミンが増えて処理が追いつかない、③お酒に弱い体質がそれを増幅する——という三つのしくみが重なった結果だ。ウイスキーは蒸留酒ゆえ、少なくとも②のヒスタミンの点ではワインやビールより有利だ。ただし①の血管拡張や③の体質は、飲んだアルコールの量しだい——むしろ度数の高いウイスキーは、同じ量なら摂取するアルコールが多くなりやすい。「蒸留酒だから軽い」と過信はできない。
対策はシンプルだ。まずは量とペースを抑え、水(チェイサー)をこまめに挟むこと。赤ワインやビールで強く出る人は、よりヒスタミンの少ない蒸留酒(ウォッカやジンなど)に替えると楽になることもある。どうしてもつらい日は、ノンアルコールという選択肢もある。そして、顔の赤みや強い動悸をともなうほどお酒に弱い体質の人にとって、これらの反応は「飲みすぎないで」という体からのサインでもある。無理に鍛えようとせず、心地よい範囲で一杯を楽しみたい。気になる症状が続くようなら、一度医師に相談を。
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