なぜウイスキーは冷凍庫に入れても凍らないのか
ビールやワインは冷凍庫でカチカチに凍るのに、ウイスキーは何時間入れても凍らずとろりとするだけ。この差は「アルコール度数」に隠れている。水とエタノールの凝固点の違いから、冷凍庫でウイスキーがとろむ仕組み、そして瓶が割れる意外な注意点までを読み解く。
冷凍庫に入れっぱなしにしたビールが凍って膨らみ、栓が押し上げられていた——そんな失敗をした人は少なくないだろう。ところが同じ冷凍庫に一晩入れたウイスキーは、凍るどころかとろりと重たくなるだけで、ちゃんと注げる。同じ「お酒」なのに、なぜこれほど差が出るのか。答えは、ラベルに書かれた「アルコール度数」に隠れている。
水とエタノールで、凍る温度がまるで違う
ウイスキーは、ざっくり言えばエタノール(アルコール)と水の混合物だ。この二つは、凍りはじめる温度が桁違いだ。水が0℃で凍るのに対し、純粋なエタノールが固まるのはおよそマイナス114℃。家庭の冷凍庫では到底届かない低温だ。
お酒はこの二つが混ざっている。水にアルコールが溶けると、水そのものの凍る温度が引き下げられるためだ(凝固点降下)。つまりアルコール度数が高いほど、凍りはじめる温度はぐっと低くなる。ビール(度数5%前後)やワイン(同12%前後)が冷凍庫で凍るのは、度数が低く凝固点が水に近いからだ。
度数で変わる「凍る温度」の目安
度数と凍りはじめる温度の関係は、おおまかに次のように整理できる(原料や糖分でも変わるため、あくまで目安)。
- ビール(約5%):約マイナス2〜3℃
- ワイン(約12%):約マイナス5℃
- 日本酒(約15%前後):約マイナス6〜7℃
- 焼酎(約25%前後):約マイナス12〜13℃
- ウイスキー・ウォッカ(約40%):約マイナス25℃前後
日本の家庭用冷蔵庫の冷凍室は、JIS規格でマイナス18℃を基準に設計されている。凍る/凍らないの境目は、この線と凝固点が交わるおおよそ度数33〜35%あたり。つまりビールやワイン、日本酒はもちろん、焼酎(25%前後)まではシャーベット状に凍ることがあり、ウイスキーやウォッカのように40%前後まで上がると凍らない——そう考えると分かりやすい。度数がもっと知りたい人はウイスキーの度数(ABV)の違いと選び方もあわせて読んでほしい。
40%のウイスキーは、家庭の冷凍庫では凍らない
市販のウイスキーの多くは度数40%前後。凍りはじめる温度はおおむねマイナス25℃前後とされ、マイナス18℃の冷凍庫では下がりきらない。これが「入れても凍らない」正体だ。度数の高いカスクストレングス(60%前後)ともなれば、凍る温度はさらに低く、まず固まらない。極寒の地で愛されてきたウォッカが凍らないのも、まったく同じ理屈である。
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