なぜ炭酸で割ったお酒(ハイボール)は酔いが早いと言われるのか
ストレートより、ハイボールでぐいぐいやった夜のほうが酔いが早い気がする——「炭酸で割ると酔いやすい」は俗説なのか。アルコールが小腸で吸収される仕組み、炭酸ガスが胃排出を早める可能性、そして「効く人・効かない人」がいる個人差まで、研究をもとに読み解く。
同じ量のウイスキーでも、ストレートやロックでちびちび飲んだ夜より、ハイボールでぐいぐいやった夜のほうが、なぜか酔いが早く回る——そんな実感を持つ人は少なくない。「炭酸で割ると酔いやすい」という酒場の言い伝えは、はたして本当なのか。じつはこれ、単なる気のせいとも言い切れない。飲み口の軽さという心理的な要因に加えて、炭酸そのものがアルコールの吸収を早める可能性を示した研究があるのだ。
酔いの速さを決めるのは「胃から小腸へ」のスピード
まず押さえておきたいのは、アルコールが体に回るしくみだ。飲んだ酒に含まれるエタノールは、胃からも少し吸収されるが、大部分は小腸で吸収される。小腸は表面積が桁違いに大きく、吸収のスピードも胃よりずっと速い。つまり、飲んだアルコールがどれだけ早く胃を通り抜けて小腸に届くか——専門的には「胃排出(いはいしゅつ)速度」と呼ばれる——が、血中アルコール濃度の立ち上がりを大きく左右する。
空きっ腹だと早く酔うのも、胃に食べ物がないと胃の出口(幽門)が開いてアルコールが素早く小腸へ送られるからだ。裏を返せば、この胃排出を速める要因があれば、酔いの立ち上がりも速くなる。炭酸が疑われているのは、まさにこの点である。
炭酸ガスが胃をふくらませる
炭酸飲料を飲むと、溶け込んでいた二酸化炭素が胃のなかで気体となって放出され、胃をわずかに押しひろげる。この胃の伸展が胃の運動を刺激し、内容物を小腸へ送り出す動きを促すと考えられている。つまり炭酸は、アルコールを小腸という「吸収の本番」へ早めに届ける後押しをしうる、というわけだ。
これを実際に人で調べたのが、2007年に英国の研究者が発表した実験だ。被験者に度数の異なる液体を飲んでもらい、その後の呼気アルコール濃度を追跡したところ、炭酸水で割ったお酒を飲んだときのほうが吸収が速かった人が、21人中14人にのぼった。統計的にも有意な差だったという。
「効く人」と「効かない人」がいる
ただし、この結果は慎重に読む必要がある。同じ実験で、残りの7人は炭酸による変化がなかったか、むしろ遅くなっている。炭酸の影響は万人に一律ではなく、個人差が大きいのだ。「炭酸だと必ず早く酔う」と断定するのは行き過ぎで、あくまで「そういう傾向が出やすい」という程度に受け止めるのが妥当だろう。
さらに興味深いのは、同じ研究で浮かび上がった別の事実だ。濃いままのお酒より、水で割って度数を下げたお酒のほうが吸収が速い人が、21人中20人と大多数を占めた。高すぎる度数はかえって胃の働きを鈍らせ、吸収を遅らせることがあるらしい。つまり炭酸そのものの作用に加えて、「割って度数を下げる」というハイボールの成り立ち自体が、吸収を速める方向に働きうるということだ。
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