なぜウイスキーのボトルは丸いものが多いのに、四角や三角の瓶もあるのか
棚に並ぶウイスキーの多くは丸い瓶。だがジャックダニエルの四角い瓶やグレンフィディックの三角ボトルのように、あえて違う形をまとった銘柄もある。なぜ形が分かれるのか。ガラス瓶づくりの合理性と、記憶に残るためのブランド戦略という二つの事情から読み解く。
バーの棚やリカーショップの陳列を眺めていると、ふと気づくことがある。多くのウイスキーが丸い瓶に入っているのに、ジャックダニエルのようにきっちり四角い瓶もあれば、断面が三角形の角張った瓶もある。中身は同じ「琥珀色の蒸留酒」なのに、なぜ容器の形はこれほどまちまちなのだろうか。じつはこの形の違いには、ガラス瓶づくりの都合と、ブランドの戦略という二つの事情が絡んでいる。
丸い瓶が「標準」である理由
そもそもウイスキーに限らず、酒瓶の多くが丸いのには実利的な理由がある。溶かしたガラスを型に吹き込んで成形する工程では、丸い形がもっとも作りやすく、品質も安定しやすい。内側からかかる圧力が全方向に均等に分散するため、同じ容量なら丸い瓶のほうが薄いガラスで済み、その分だけ軽く、原料も少なくて済む。
逆に角のある四角い瓶は、角の部分に応力が集中しやすく、強度を保つには壁を厚くする必要がある。ある容器メーカーの解説によれば、同じ容量なら四角い瓶は丸い瓶より一割以上多くガラスを使うこともあるという。丸い瓶は落としたり倒したりの衝撃にも比較的強く、扱いやすい。つまり「とりあえず丸」には、コストと安全性という理にかなった背景があるわけだ。
それでも四角や三角が選ばれるわけ
では、なぜあえて手間のかかる形を選ぶ銘柄があるのか。ひとつは輸送・収納の効率だ。四角い瓶は側面が平らなので、箱に詰めたときに隙間が生まれにくく、棚でも並べやすい。だがそれ以上に大きいのが「ブランドとしての見え方」である。
丸い瓶が伝統的でオーソドックスに映るのに対し、変わった形の瓶は棚の中でひときわ目を引く。ラベルの貼りやすさや、手に取ったときの記憶への残りやすさも含めて、形そのものが看板の役割を果たす。裏を返せば、いまも大半の銘柄が丸い瓶を選ぶのは、無難だからというより、それが最も理にかなった標準形だからだ。だからこそ、そこからあえて外れる形は「うちは他とは違う」という無言のメッセージにもなる。実際、ウイスキー史には形で個性を刻んだ銘柄がいくつもある。
形が物語になった銘柄たち
もっとも有名なのがジャックダニエルだ。四角い瓶での瓶詰めが始まったのは1895年頃とされる。当時、ウイスキーは樽で酒場に卸され、店が水で薄めて売ることも多かった。自社で瓶に詰めて売ることは「中身が確かだ」という証しになり、四角い瓶はその潔さを象徴する記号として棚の中で際立った。「四角い瓶は、実直な男にふさわしい」という創業者の言葉も伝えられている。

スコッチにも形で名を上げた銘柄がある。グレンフィディックの緑色の三角ボトルは、1956年にデザイナーのハンス・シュレーガーが手がけたもので、1961年頃から使われはじめた。ウイスキーを構成する要素をかたどったとされ、角張ったシルエットは当時としては斬新なモダンさの表明でもあった。
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