新潟県北部、冬は雪に閉ざされ夏が短く湿度の高い村上市。その宿田の地に、変圧器メーカーの吉田電材工業が2022年に立ち上げたのが吉田電材蒸留所である。買い取った半導体工場を改装した延床約1,090平方メートルの建屋には、ドイツのコーテ社製のハイブリッドスチルが据えられた。5,000リットルのヘルメット型ポットスチルに7段のコラムを組み合わせた一台で、単式の重さと連続式の軽さを行き来できる。モルトではなくグレーンを主役に据えた、クラフト規模では日本初のグレーンウイスキー専業蒸留所であり、北海道産デントコーンを軸にライ麦と大麦麦芽を配合したアメリカンタイプの穀物由来の甘さを狙う。ブレンデッドの脇役だったグレーンを主語に置き換えるという一点で、この蒸留所は国内のどことも違う立ち位置にある。
スチルはドイツのコーテ社製ハイブリッド型で、5,000リットルのヘルメット型ポットスチルと7段コラムを組み合わせる。単式の重さと連続式の軽さを一台で調整できるため、穀物の甘みを残しながら雑味だけを切り上げられるのが強み。原料は北海道産デントコーンを主体にライ麦と大麦麦芽を配合し、ドイツのヴァイヤーマン社の麦芽、愛媛県産はだか麦、新潟県産ゆきはな六条大麦も使い分ける。年180回・10万リットル(平均アルコール度数62%)の仕込みを当面の目標に置く。
1940年に東京・神田で創業した吉田電材工業が母体。2017年に新潟の子会社ヨシデンを設立し、2022年3月に村上税務署からウイスキー製造免許を取得、同年に本格稼働した。3代目社長の松本匡史が蒸留所長を兼ねる。当初は1年熟成の250ミリリットル瓶を第1弾・第2弾と重ね、2026年8月に初の700ミリリットルフルボトルとなる2年熟成品を発売した。
所在は新潟県村上市宿田344-1。豪雪地帯に属し、夏が短く年間を通じて湿度が高い土地である。仕込み水は敷地内の井戸から汲む荒川水系の地下水で、硬度57前後の軟水。熟成庫は樽ラック式が2棟あり、約2,100樽を貯蔵できる。
初期のリリースは「シングルグレーン 1年熟成」(250ミリリットル・55%)。2026年8月発売の「シングルグレーン スターデルタ 2Y」(700ミリリットル・53%)が初のフルボトルで、アメリカンホワイトオークの新樽で2年熟成させている。

この蒸留所が属する地域
1923年、鳥井信治郎が山崎蒸溜所を開設したのが日本ウイスキーの始まり。技師として招かれた竹鶴政孝は後にニッカウヰスキーを設立し余市蒸溜所を開いた。スコッチの製法を土台にしながらも、繊細な水質と四季の寒暖差を生かした独自のスタイルを確立し、2000年代以降は国際コンペティションでの受賞を機に世界的な評価を得ている。
日本を深掘りする →