
WHY THIS TASTE
アイラ島の「歌う砂」と呼ばれる浜、トリー・バンの名を冠した19年熟成。アメリカンオークのバーボン樽とオロロソシェリー樽で寝かせた原酒を組み合わせ、46.2度・ノンチルフィルターで瓶詰めする。2019年の初回以降、樽構成と度数は据え置いたままバッチ番号を重ねる年次生産で、配合はバッチごとに微妙に振れる。若い表現の煙が持つ刺々しさが19年でほどけ、シェリー由来のチョコレートや潮気、ミントのような清涼感が前に出る。

この味を生む蒸留所
アードベッグ蒸留所アイラ島南岸、キルダルトンの岩がちな海際に、世界で最も愛と議論を呼ぶ煙が立ちのぼる。1815年、ジョン・マクドゥーガルが正式に創業したアードベッグは、丘の上に横たわるウィガダル湖の茶褐色に染まった軟水を引き、島でも屈指の高いフェノール値を誇る麦芽を焚き込む。立ちのぼるのは正露丸を思わせる薬品香、煤、タール、そしてその奥から不意に現れる柑橘とバニラ——この危ういほどの振れ幅こそがアードベッグの魔力だ。1980年代の休止と沈黙を経て、1997年にグレンモーレンジィ社(現モエ ヘネシー/LVMH傘下)が再興。世界中の熱狂的信奉者「アードベギャン」に支えられ、いまや現代アイラの象徴となった。なぜここまで攻撃的なのか——それは、島の南東でピートと潮に洗われ続けた土地そのものを、薄めずに瓶へ閉じ込めているからに他ならない。
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アードベッグArdbeg
スコットランド・アイラ島を代表するシングルモルト。1798年創業とされ、強いピート香と潮の香りが特徴の重厚な味わいで知られる。1981年に一時閉鎖されたが、1997年にグレンモーレンジィ社(現LVMH傘下)が買収して再稼働。ラフロイグ、ラガヴーリンと並ぶキルダルトン蒸留所の一つとして、熱心な愛好家(コミッティー)を持つブランドとして人気を博している。
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