二日酔いになってしまった朝にできること——「治す方法」はあるのか、水・薬・ウコン・迎え酒はどこまで効くのか
飲みすぎた翌朝、頭が重く胃がむかつく。だが「二日酔いを治す方法」は、いまだ科学的に確立されていない。二日酔いの正体と症状の山が来るタイミング、効くと証明されたものが無いという現実、それでも朝を軽くする地味な手当て、そして「二日酔いで済ませてはいけない」危険なサインまでを整理する。
昨夜のウイスキーは、たしかに美味しかった。問題は今朝である。頭は重く、胃はむかつき、喉は張りついたように渇いている——そんな朝に人は「二日酔いの治し方」を検索する。
ところが、その答えは期待するほど明るいものではない。世界中の研究者が長年探しても、二日酔いを確実に「治す」方法はまだ見つかっていないのだ。それでも、いま体で起きていることを知れば、やるべきことと、やらないほうがいいことは、はっきり分かれてくる。
この記事では、二日酔いの正体、いつ終わるのか、何が効いて何が効かないのか、そして「二日酔いで済ませてはいけない」危険なサインまでを整理する。飲む前の工夫については二日酔いにならない飲み方にまとめてあるので、そちらもあわせて読んでほしい。
そもそも、体で何が起きているのか
二日酔いは「脱水」の一言で片づけられがちだが、原因はそれだけではない。厚生労働省の e-ヘルスネットは、二日酔いの原因として、軽い離脱症状、ホルモンの乱れによる脱水や低血糖、体の酸塩基平衡のかたより、炎症反応、アセトアルデヒドの影響、酒に含まれる不純物などを有力な説として挙げ、単一の要因ではなく、これらが複雑にからみあって生じると説明している。
つまり二日酔いは、一つの故障ではなく、いくつもの小さな不調が同時に起きている状態だ。頭痛、吐き気、だるさ、理由のない不安感——症状が人によってバラバラなのも、原因が一つではないからである。
だからこそ「これさえ飲めば治る」という特効薬は生まれにくい。一つの穴をふさいでも、残りの穴は開いたままだからだ。
いつ終わるのか——山は「抜けきる頃」に来る
つらさの山がいつ来るのかを知っておくだけでも、気は楽になる。
症状が現れはじめるのは、飲み終えてからおおむね6〜8時間後。血中のアルコールが大きく下がりはじめる頃だ。そして最も重くなるのは、意外にもアルコールがほぼゼロに戻るころである。酒が残っているあいだではなく、抜けきったところで山場を迎える。そこから先は、発症からおよそ8〜24時間かけてゆっくり薄れていく。
このズレは、二日酔いの一因が「軽い離脱症状」であることをよく物語っている。神経を抑えつけていたアルコールが引いたあと、その神経がしばらく過敏なままになる。朝いちばんの光や物音がやけにこたえるのは、そのためだと考えられている。
なお、症状の重さと「アルコールが抜けたかどうか」は別の話だ。二日酔いの症状が軽くても、飲んだ量によっては、まだ体内にアルコールが残っていることがある。運転の予定があるなら、アルコールが体から抜ける時間を先に確かめてほしい。
残念な結論——「効く」と証明されたものは、まだない
ここが本題である。
2005年に発表されたランダム化比較試験の系統的レビューは、プロプラノロール、トロピセトロン、トルフェナム酸、果糖・ブドウ糖、そしてボラージやアーティチョーク、ウチワサボテン、酵母製剤といったサプリメント類を検討したうえで、「二日酔いの予防または治療に有効だという説得力のある証拠は、通常医療にも代替療法にも存在しない」と結論づけた。もっとも効果的なのは、飲まないか、ほどほどにすることだ、と。
その後も研究は積み重ねられたが、2022年に医学誌『Addiction』へ発表された系統的レビュー(オンライン公開は2021年末)も、二日酔いの治療・予防に推奨できるだけの薬理学的介入は「ごく質の低い証拠しかない」としている。米国立アルコール乱用・アルコール依存症研究所(NIAAA)に至っては、時間だけが二日酔いを癒やす、コーヒーもシャワーも迎え酒も二日酔いを治しはしない、と明言している。
日本でおなじみのウコンやしじみ(オルニチン)も、同じ土俵にある。オルニチンについては、飲酒翌朝の疲労感を扱った試験が報告されてはいるが、参加者11人・顔が赤くなる体質の人に限った小規模な研究で、二日酔いの重さそのものを測ったものではない。「効かないと証明された」のではなく、「効くと言い切れるだけの根拠がない」——それが、いまの正確な位置づけである。
ウコンについては、効果の不確かさとは別に、知っておきたい報告もある。1994年から2003年にかけて日本肝臓学会へ集積された、健康食品による肝障害89例の記録では、原因として最も多く挙がったのがウコンで29件。次いでアガリクスの9件だった。これは報告された症例の内訳であり、利用者数の多さも反映するから、「飲んだ人の何割が肝障害になる」という数字ではない。それでも、肝臓に負荷がかかった翌朝に、肝障害の報告がある健康食品をわざわざ足す必要があるかは、一度考えたほうがいい。肝臓に持病のある人ならなおさらである。
それでも、朝を少し軽くする地味な手当て
治すことはできなくても、つらさをやわらげ、回復を邪魔しないことはできる。
水分を取る。 脱水だけが原因ではないとはいえ、アルコールには利尿作用がある以上、失った分を戻す意味はある。水、麦茶、味噌汁、スープ——飲めるものでいい。なお「スポーツドリンクで電解質を補えば二日酔いが軽くなる」という説に、NIAAAは慎重な見方を示しており、電解質の乱れの程度と二日酔いの重さのあいだに明確な相関は確認されていないとしている。特別なものを買い足すより、飲みやすいものを選べば十分だ。
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