なぜ海沿いの蒸留所のウイスキーは「潮の香り」がするのか——塩味の正体は海の塩ではなかった
タリスカーやオールド・プルトニーは「潮っぽい」「塩っぽい」と評される。だが測ってみると塩分はごくわずか。海沿いの蒸留所のウイスキーが塩の香りをまとう理由を、熟成庫の伝説と「脳が作る塩味」の科学から読み解く。
ウイスキーの感想を読んでいると、「潮の香り」「磯っぽい」「塩っぽい」といった言葉によく出会う。とくに海沿いの蒸留所のボトルには、この手の表現がつきまとう。では、そのウイスキーには本当に海の塩が溶けているのだろうか。結論を先に言えば、答えは「ほぼノー」だ。この記事では、代表的な「潮っぽい」ボトルを挙げながら、その正体が塩ではなく香りと記憶にあることを読み解いていく。
「潮っぽい」と語られる代表的なボトル
海のイメージをまとう銘柄といえば、まずスカイ島のタリスカーが挙がる。ピリッとした胡椒感と潮気が同居する味わいは、「海の男のウイスキー」とも評される。
長らくスコットランド本土最北級とされてきた、ウィックの街のオールド・プルトニーも、「潮の香りの銘柄」として名高い。この評判の出どころははっきりしていて、1978年に雑誌『デカンター』の別冊で「北のマンサニージャ(辛口シェリーの一種)」と評されて以来、塩っぽいイメージが定着したと言われる。

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