
WHY THIS TASTE
バーボン樽60%・シェリー樽40%という公式比率で10年熟成させた、レンジの基準となる一本。麦芽のフェノール値は12〜15ppm程度と控えめで、2.5回蒸留由来の厚みのある酒質に樽の甘みが乗る。46度、ノンチルフィルター・無着色。グーズベリーやマンゴーの果実香に蜂蜜と麦芽の穀物感が重なり、締めくくりに蒸留所の個性である潮の塩味が残る。年に複数回のバッチで瓶詰めされ、樽比率はリリースごとに微調整される。

この味を生む蒸留所
スプリングバンク蒸留所スコットランド、キャンベルタウンに立つ、同地に残る数少ない蒸留所の一つである。1828年に免許を得て、レイド兄弟が創業。1837年にジョン&ウィリアム・ミッチェル兄弟が取得し、以来ミッチェル家がJ&Aミッチェル社として今も一族経営を続ける。最大の特徴は、大麦の製麦から瓶詰めまで、ウイスキー造りの全工程を自社の敷地内で行うスコットランド唯一の蒸留所である点だ。1992年にはフロアモルティングを復活させた。造る原酒は3種——2.5回蒸留のミディアム・ピート『スプリングバンク』、2回蒸留のヘビー・ピート『ロングロウ』、3回蒸留のライト・ピート『ヘーゼルバーン』。手仕事を貫く、キャンベルタウンの至宝だ。
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スプリングバンクSpringbank
スコットランド・キャンベルタウンにある1828年創業の家族経営蒸溜所で、J&A ミッチェルが所有する。かつて30以上の蒸溜所があったキャンベルタウンで今も稼働を続ける数少ない蒸溜所の一つ。製麦から瓶詰めまで全工程を自社で行う唯一のスコットランド蒸溜所としても知られ、無濾過・ノンチルフィルタードの伝統的な製法を守る。
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グラスや瓶の底に、黒い粒や白いもやが見えることがある。正体は二系統に分かれる。白いものなら、温度を戻して消えるかどうかが決め手になる。飲んで大丈夫なのか、そして樽の沈殿物をあえて瓶に残すボトラーの話。

日本に入ってこない一本を、海外の通販で買えるのか。免許も届出も要らないこと、ウイスキーの関税が無税であること、課税価格1万円以下でも酒税だけは免除されないこと、そして税より高い「運送の壁」までを一次情報で確かめた。

19世紀に閉じた蒸溜所の設備や風景を、いま私たちが語れるのはなぜか。1885年から2年ほどをかけて連合王国じゅうの蒸溜所を訪ね歩き、160軒あまりを記録した男がいた。その本には、いまや「王」と呼ばれる蒸溜所がたった7行しか登場しない。

蒸溜所は水源を誇るのに、瓶詰め前の加水にはミネラルを抜いた水を使う。理由のひとつは、樽由来のシュウ酸と水のカルシウムが作る消えない結晶にある。40%の一本の3割前後を占める「割り水」の話。

同じ40%の二本でも、片方は喉が焼け、片方はするりと入る。灼熱感はエタノール濃度とともに強まるが、「きつさ」はそれだけで決まらない。蒸留のカット・樽の引き算・チルフィルタリングという三つの分かれ道から、度数が語っていないものを読み解く。

蒸溜所の工程の入口には、とうに消えた会社の名を刻んだ鋳鉄の箱がある。ポーティアスとボビー。「良すぎて自分の商売を終わらせた」と語られる二社の実際と、軽井沢から静岡へ渡った一台の話。