なぜお酒(ウイスキー)を飲んだ翌朝、顔がむくむのか——水分は出ていったはずなのに、体が水を抱え込む理由
飲んだ翌朝、鏡の中の顔が腫れぼったい。アルコールには強い利尿作用があるのに、なぜむくむのか。「水の総量」ではなく「置き場所」の側から、飲酒後のむくみが起きる仕組みと、ウイスキーならではの落とし穴を解きほぐします。
飲みすぎた翌朝、鏡に映った自分の顔がひとまわり大きい。まぶたが重く、頬の輪郭がぼやけている。ウイスキーは糖質ゼロだし、そんなに量も飲んでいないはずなのに——という経験は、多くの人にあるはずです。
しかも不思議なのは、お酒を飲んだ夜はトイレが近くなること。水分はむしろ体から出ていっているのに、なぜ翌朝は水を溜め込んだような顔になるのでしょうか。
この記事では、この一見矛盾した現象の仕組みを、ウイスキーならではの事情もあわせて解きほぐします。
むくみは「水の総量」だけの話ではない
まず、ここを取り違えると話が合わなくなります。むくみ(浮腫)は、単に体の水分が増えた状態を指すわけではありません。水分が血管の中から外(細胞と細胞のあいだ)へはみ出して、そこに溜まっている状態です。
つまり、動いているのは「総量」と「置き場所」の両方です。そのため、トイレで水分を失いながら、同時に顔がむくむということが起こります。飲酒後のむくみは、水が余っているというより、水の居場所がずれた結果なのです。
では、何がその「ずれ」を起こすのか。犯人はひとつではありません。
犯人その1——アルコールが血管をゆるめる
アルコールには血管を広げる作用があります。飲むと体が温かく感じるのは、このためです。
血管が広がると、血管の壁から水分が外へ漏れ出しやすくなります。徳島県医師会のコラムで、北川内科胃腸科の北川直之医師は、血液中のアルコール濃度が高くなって血管が拡張すると、静脈やリンパによる水分の処理が追いつかずむくみが生じやすい、と説明しています。
漏れ出す量が増え、回収が追いつかない。この二つが同時に起きれば、水は組織のあいだに残ります。
(なお、飲んで顔が真っ赤になるかどうかは血管拡張だけの話ではなく、アセトアルデヒドを分解する体質が大きく関わります。赤くなる人とむくむ人は、必ずしも同じではありません。)
犯人その2——出ていって、足りなくなる
もうひとつはホルモンの話です。体はふだん、脳から出る**抗利尿ホルモン(バソプレシン)**によって、腎臓に「水を捨てすぎるな」と指示を出しています。ところがアルコールは、この指示を鈍らせます。結果、飲んだ量以上の水が尿として出ていく——これが、飲むとトイレが近くなる理由です(詳しくはこちら)。
失われる水は決して少なくありません。ビールについては、摂取した水分の1.2〜1.5倍が尿として出ていくとする説明もあります(水分をほとんど含まないストレートのウイスキーに同じ倍率が当てはまるわけではありませんが、「飲んでいるのに乾いていく」という方向は変わりません)。
そして体は、水が足りなくなれば、残った水を手放すまいと働くと考えられます。飲んでいる最中の「出す」局面と、そのあとの「抱え込む」局面が時間差でやってくる。そこへ血管からの水漏れが重なった結果が、翌朝のむくみです。
犯人その3——ウイスキーに合う、しょっぱいつまみ
ここからがウイスキー好きに固有の話です。
塩分(ナトリウム)を多く摂ると、血液中のナトリウム濃度が上がり、それを薄めるように体液量が増えます。むくみの古典的な原因です。
そしてウイスキーは、しょっぱいつまみと恐ろしく相性がいい。ナッツ、生ハム、チーズ、燻製、ドライソーセージ——ウイスキーの度数と香りを受け止める定番は、たいてい塩気と脂を持っています。相性がいいからこそ手が伸び、むくみの原因を自分で積み増してしまう。
ウイスキーが糖質ゼロなのは本当です。ただし、カロリーがゼロなわけでも、むくまないわけでもありません。アルコール自体が1gあたり約7kcalを持っていますし、むくみのほうは糖質ではなく、アルコールと塩分と水分の問題だからです。
なぜ「顔」で、なぜ「朝」なのか
立って過ごしている日中、余分な水分は重力にしたがって脚のほうへ降りていきます。夕方に靴がきつくなるのは、そのためです。
ところが横になって眠っているあいだは、その重力の偏りがなくなります。脚に集まっていた水分が体じゅうへ配り直され、上半身や顔のほうにも回ってくる。前掲のコラムでも、夜は横になって寝ているあいだに顔のほうへ水分が溜まるため、朝起きたときに顔やまぶたが腫れやすい、と説明されています。
顔だけが特別に水を溜め込むわけではありません(まぶたは皮膚が薄く、変化が目立ちやすいだけです)。夕方の脚と朝の顔は、同じ現象を別の時間に見ているだけなのです。
ウイスキー特有の落とし穴——「そんなに飲んでない」が当てにならない
ウイスキーは、少量でもしっかり効く酒です。純アルコール量は「量(ml)×度数(%)÷100×0.8」で概算できます。40%のウイスキーをダブル(60ml)で2杯飲めば、それだけで約38g。ビール中瓶(500ml・5%)およそ2本分に相当します。
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