なぜグレンモーレンジィは"樽で化ける"ウイスキーになったのか——スコットランド一の背高スチルと、追熟に先鞭をつけた蒸溜所
華やかで軽やか、そして樽次第で表情を変える——グレンモーレンジィの個性を「スコットランド一背の高いスチル」と「カスクフィニッシュの歴史」の二つの鍵から読み解く。
グレンモーレンジィ(Glenmorangie)は「エレガント」「樽で表情が変わる」と語られることの多いシングルモルトだ。オレンジや白桃を思わせる華やかさ、それでいて飲み口はどこまでも軽やか。この個性はどこから来るのか。答えは「スコットランドで一番背の高い蒸溜器」と「樽の使い方に賭けてきた歴史」の二つにある。この記事では、その二つを軸にグレンモーレンジィという蒸溜所の面白さを読み解く。
スコットランドで一番"背が高い"スチル
グレンモーレンジィのスチル(蒸溜器)は、スコットランドで最も背が高い。全高およそ8メートル。とりわけ首が長く、その部分だけで5メートル前後あり、蒸溜所が「大人のキリンほどの高さ」と呼ぶのはこの首のことだ。
なぜ背の高さが味を決めるのか。蒸溜中、熱で立ちのぼった蒸気のうち重い成分は、高い首を登りきれずに途中で液体へ戻り、再び蒸溜される。この「還流(リフラックス)」が強いほど、最終的に上まで届くのは軽く繊細な香味成分だけになる。背の高い首は、いわば香りの"ふるい"だ。グレンモーレンジィ特有の花のような軽やかさは、この造りに負うところが大きい。
蒸溜所の始まりは1843年。地元の農場主ウィリアム・マテソンが、テインの町にあった醸造所を改装し、中古のジン用スチル2基でウイスキー造りを始めた。その背の高いスチルの形が、そのまま今の個性の源になっている。まずは定番の10年で、その軽やかさを確かめてほしい。

Glenmorangie The Original 10 Year Old
🏴 スコットランド ・ グレンモーレンジィ蒸留所 ・ シングルモルト ・ 10年 ・ 40%
味の多くは樽が決める——カスクフィニッシュに先鞭をつけた蒸溜所
もう一つの鍵が樽だ。グレンモーレンジィは長く「ウイスキーの味わいの多くは樽が決める」という思想を掲げ、1990年代にはワインやシェリー、ポートなどの樽で"仕上げ"を行う「カスクフィニッシュ(追熟)」を世に広めた先駆けの一つに数えられる。
ベースはアメリカンオークのバーボン樽でじっくり寝かせた原酒。そこへ、別の酒が染み込んだ樽で数か月から数年の"追い熟成"を重ねると、香りに新しい層が加わる。シェリー樽で仕上げたラサンタは、甘くふくよかな表情に変わる。

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