なぜ白州は「森香る」ウイスキーと呼ばれ、これほど愛されるのか——南アルプスの森に建つ、サントリー二番目の蒸溜所
緑のボトルと「森香るハイボール」で知られる白州。標高708mの森に建つサントリー二番目の蒸溜所が、なぜ「森香るウイスキー」と呼ばれ、これほど愛されるのか——立地・水・多彩な原酒から読み解く。
緑色のボトル、ラベルにあしらわれた森の意匠、そして「森香るハイボール」というキャッチコピー——白州は、数あるジャパニーズウイスキーのなかでも「爽やかさ」で真っ先に名前が挙がる一本だ。同じサントリーの山崎が重厚で深い「静」だとすれば、白州は瑞々しく軽快な「動」。なぜ白州は、これほど「森」のイメージと結びつき、愛されるようになったのか。
山崎から50年、サントリーが森に建てた二番目の蒸溜所
サントリーがウイスキーづくりを始めたのは1923年、大阪と京都の境にある山崎でのこと。それから半世紀の節目にあたる1973年、二番目の蒸溜所として誕生したのが白州だった。
場所に選ばれたのは、山梨県北杜市、南アルプス・甲斐駒ヶ岳の麓。標高はおよそ708メートルと、モルトウイスキーの蒸溜所としては世界でも高い部類に入る。山崎より冷涼なこの高地の気候は、山崎とは違う個性の原酒を生むための、意図的な選択だった。同じ会社が二つの蒸溜所を持つのは、味の「幅」を手に入れるためでもある。
「森の蒸溜所」を支える、水と自然
白州が「森の蒸溜所」と呼ばれるのは、単なるイメージ戦略ではない。蒸溜所の敷地はおよそ82万平方メートルにおよび、その大半が森に覆われている。一帯はユネスコエコパークに指定され、約60種の野鳥が暮らすサンクチュアリになっている。
仕込みに使われるのは、甲斐駒ヶ岳に降った雨や雪が花崗岩の層でじっくり濾された伏流水。硬度およそ30という、ミネラルの少ない軟らかな水だ。近くを流れる尾白川は「名水百選」にも選ばれている。水や気候が味の「すべて」を決めるわけではないが、この澄んだ軟水と冷涼な森が、白州のきれいで軽やかな酒質の下地になっていることは間違いない。
白州の正体は「一つの味」ではなく「多彩な原酒」
白州を語るうえで見落とされがちなのが、その造りの幅の広さだ。白州にはさまざまな形をしたポットスチルが並び、これほど多様な蒸溜器を備えた蒸溜所は世界的にも珍しい。スチルの形が変われば、生まれてくる原酒の個性も変わる。
さらに白州は、ピート(泥炭)で燻していないノンピートの麦芽から、40ppm前後のしっかり燻した麦芽まで、幅広い麦芽を使い分ける。だからこそ「白州」という一本のなかには、フレッシュな原酒からほのかに煙をまとった原酒まで、性格の異なる多彩な原酒が織り込まれている。かつては年産3000万リットル規模を誇り、単一のモルト蒸溜所として世界最大級とされた時期もあった。この造りの引き出しの多さが、白州の複雑さと奥行きを生んでいる。
若葉とすだち、そしてほのかな煙
白州の香りはよく、新茶の若葉やすだち、ミント、早摘みの青リンゴにたとえられる。そこに、軽く焚いたピート由来のほのかなスモーキーさが影のように差し込む。この「みずみずしさ」と「かすかな煙」の同居こそ、白州ならではの個性だ。
その魅力が最も分かりやすく開くのが、ソーダで割った「森香るハイボール」。白州とソーダをおよそ1対3〜1対4で合わせ、炭酸が抜けないよう混ぜすぎないのがコツとされる。炭酸の泡が若葉のような香りを一気に立ち上げ、食事にもよく寄り添う。
なぜ、これほど愛されるのか
白州が愛される理由は、味わいだけではない。重厚な山崎と対をなす爽快さという「立ち位置」、森の蒸溜所という揺るぎない物語、そして近年の品薄で「なかなか手に入らない一本」になったことも、憧れを一層かき立てている。

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