なぜ飲んだ翌朝も、息や体が酒くさいのか——肺から抜けるアルコールと、「もう抜けた」の落とし穴
翌朝、歯を磨いても息が酒くさいのはなぜか。匂っているのは口に残った酒ではなく、血液から肺を通って出てくるアルコールそのものだ。三つある「酒くささ」の正体と、消えるまでの時間の目安、そして「寝れば抜ける」という誤解を解く。
「ゆうべは飲みすぎた」と思いながら満員電車に乗り、ふと自分の息が気になる——。飲んだ翌朝に体や息が酒くさいのは、なんとなく「昨日のお酒が口の中に残っているから」だと思われがちだ。だが実際に匂っているのは、口の中の残りかすではなく、体の内側からもう一度出てきたアルコールであることが多い。
この記事では、翌朝の「酒くささ」がどこから来るのか、いつごろ消えるのか、そして「もう抜けたはず」という自己判断がなぜ危ういのかを順に見ていく。
匂いは口ではなく、肺から出ている
飲んだアルコールは、胃と小腸から吸収されて血液に乗り、全身をめぐる。その大半は肝臓で分解されるが、すべてではない。厚生労働省の e-ヘルスネットによれば、わずかな量は分解されないまま、呼気(0.7%)・汗(0.1%)・尿(0.3〜4%)から体の外へ出ていく。この割合は資料によって幅があり、「肝臓で約9割、残りが呼気・汗・尿」と大づかみに説明されることも多い。
つまり、血液の中にアルコールが残っているかぎり、肺で酸素と二酸化炭素を交換するたびに、アルコールも気体として息に混じり続ける。歯を磨いてもうがいをしても匂いが消えないのは、匂いの出どころが口ではなく肺だからだ。汗がかすかに酒くさく感じられるのも同じ理屈である。
飲酒検査で呼気を測るのは、この仕組みを利用しているからだ。息の中のアルコール濃度は、血液中の濃度をよく映す鏡になる。
「酒くささ」には三つの出どころがある
やっかいなのは、翌朝の匂いが一種類ではないことだ。
ひとつめは、いま述べたエタノールそのものの匂い。血中に残っているかぎり、肺から出続ける。
ふたつめは、アルコールが分解される途中でできるアセトアルデヒドだ。顔が赤くなる原因物質としても知られる(→お酒で顔が赤くなる理由)この物質はツンとした刺激臭を持ち、やはり血液から肺を経て息に混じると考えられている。分解の速さには生まれつきの体質差が大きいため、残り方にも個人差が出やすい。
みっつめが、純粋な口臭である。アルコールには利尿作用があり(→飲むとトイレが近くなる理由)、体は水分を失う。唾液も減る。唾液は口の中の細菌を洗い流す役目を担っているので、それが減れば細菌が増え、匂いの原因物質が生まれやすくなる。眠っているあいだは唾液の分泌がさらに落ちるため、朝いちばんの口臭は普段より強くなりがちだ。
ガムやマウスウォッシュで軽くなるのは、基本的にこのみっつめだけである。肺から上がってくる分は、口の中をどれだけ手入れしても消えない。
いつ消えるのか——「体重×0.1g」という目安
では、いつまで匂うのか。答えは「体内のアルコールが分解し終わるまで」で、これは飲んだ量と体格でおおよそ決まる。
e-ヘルスネットは、1時間で分解できるアルコールの量を「体重×0.1g程度」としている。体重60kgなら1時間に約6g、70kgなら約7gという計算だ。ただしこれはあくまで目安で、分解に関わる酵素の働きには生まれつきの差があり、実際にはこれより遅い人も少なくない。
ウイスキーに置き換えてみよう。40%のウイスキーをダブル(60ml)で1杯飲むと、純アルコールはおよそ19g。ビール中びん1本などと同じ「1単位」(純アルコール約20g)に換算できる量だ。
このコラムの関連
次に読む

ブラインド・テイスティング用のグラスは、なぜ青いのか——白ワインを赤く染めた実験と、色を消す道具
ブラインド用のグラスには、中身の色が見えない青や黒のものがある。色を隠すと何が変わるのか——白ワインを赤く染めた2001年の実験と、黒いグラスを使った追試、そしてウイスキーの色が読み違えやすい理由をたどる。

ウイスキーの瓶の底に沈んでいる粒は何なのか——温度を戻して消えるかどうかで、正体は二つに分かれる
グラスや瓶の底に、黒い粒や白いもやが見えることがある。正体は二系統に分かれる。白いものなら、温度を戻して消えるかどうかが決め手になる。飲んで大丈夫なのか、そして樽の沈殿物をあえて瓶に残すボトラーの話。



