ウイスキーの沈殿物・浮遊物の正体は?——瓶の底の粒や白いカスは「温度を戻して消えるか」で見分けられる
瓶の底の黒い粒、白いカスや浮遊物(澱)。正体は二系統に分かれ、白いものは温度を戻して消えるかが決め手になる。見た目別の早見表、飲んで大丈夫か、古いボトルの澱の読み方、樽の沈殿物をあえて瓶に残すボトラーの話まで。
グラスに注いだあと、底のほうに何か小さいものが沈んでいるのに気づくことがある。黒っぽい粒だったり、白い綿のようなカスだったり、光にかざすとちらちら舞う細かい浮遊物だったり。昔から「澱(おり)」と呼ばれてきたものだ。
買ったばかりの一本でそれが起きると、たいていの人はまず疑う。傷んでいるのではないか。異物が入っているのではないか。
結論から書くと、多くの場合それは異物ではなく、そのウイスキーがたどってきた道のりの一部である。ただし、ひとくちに「沈殿物」「浮遊物」といっても、起きていることは一つではない。この記事では正体を二つの系統に切り分けたうえで、見分け方と、飲んでよいのか、気になるならどうするのかまでをまとめる。
まず見た目で当たりをつける——沈殿物・浮遊物の早見表
細かい理屈の前に、見た目からの当たりのつけ方を置いておく。
| 見た目 | 正体の候補 | 温度を戻すと | 飲んでよいか |
|---|---|---|---|
| 液全体がうっすら白く曇る/白い綿状のもや | 脂肪酸のエステル類 | 消える | 問題ない |
| 底で光る白い小さな粒・薄片 | シュウ酸カルシウムの結晶 | 消えない | 問題ないとされる |
| 黒〜こげ茶の細かい粒 | 樽の内側の炭・木のかけら | 消えない | 問題ない(気になれば濾す) |
| 茶色く軽い破片が浮く | 崩れたコルク | 消えない | 中身の風味の劣化に注意 |
白いものなら、常温に戻して消えるかどうかが最初の分かれ道になる。以下、それぞれを順に見ていく。
分け方は「溶けていた成分から生じた」か「入っていた」か
沈殿や浮遊物を「濁り」とひとくくりにすると、話がこんがらがる。分けるべき軸は、もともと液体に溶けていた成分から生じたのか、はじめから固形の状態で入っていたのかである。
- 溶けていた成分から生じた……脂肪酸のエステル類(温度が戻れば消える)と、シュウ酸カルシウムの結晶(消えない)。
- はじめから固形で入っていた……樽の内側から出た炭や木のかけら、崩れたコルクの破片。
見た目が似ていても、原因も、対処も、意味もそれぞれ違う。
溶けていた成分から①——冷えると出て、温まると消える
加水したときや冷やしたときに、液体全体がうっすら白く曇ることがある。
これは、蒸溜の段階で原酒へ移り、樽熟成のあいだにも増える長鎖の脂肪酸やそのエステル類が、度数や温度が下がったことで溶けきれなくなり、細かく寄り集まって光を散らすために起こる。強く冷えると、綿のような白い塊として目に見える形をとることもある。
大事なのは、これが可逆だということだ。温度が戻れば、また溶けて見えなくなる。冬に届いた一本に白いものが浮いていて、部屋に置いておいたら消えたなら、これだったことになる。
濁りが出るかどうかの目安は、瓶詰め度数がおよそ46%以上かどうかとされる(解説によっては45%前後とするものもあり、幅のある経験則である)。46%以上なら低温でも脂肪酸類は溶けたままとどまりやすく、40〜43%といった一般的な度数では出やすくなる。この現象と、それを避けるための冷却濾過という工程については、別稿にまとめている(なぜウイスキーは冷えると白く濁るのか)。
アードベッグ 10年は、冷却濾過をかけずに46%で詰める、という選択を公表している一本だ。グラスで水を多めに足すと、白く曇ることもある。
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