
WHY THIS TASTE
1979年発売、2010年にノンチルフィルター・無着色・46.3度へ刷新された基幹表現。エックスバーボン樽とリフィル主体のエックスシェリー樽を組み合わせて12年熟成する。マーガデール泉のピートを通さない硬水で仕込むアイラでは珍しいノンピート麦芽ゆえ、潮の塩気とヘーゼルナッツ、ドライフルーツの甘みが穏やかに同居する。力強くオイリーな酒質がシェリーの甘みを受け止め、飲み飽きない食中酒として定着したコアレンジの原点。

この味を生む蒸留所
ブナハーブン蒸留所ゲール語で「川の河口」を意味するブナハーブンは、ポートアスケイグから未舗装の細道をたどった先、人里離れた入り江にひっそりと佇む。1881年創業。一マイル北のマーガデール泉から、ピートを通さない硬質な水を引くのが大きな特徴だ。そのためアイラにありながらスモークは控えめ——潮風とナッツ、そしてシェリー樽由来のドライフルーツの円熟が主役となり、重厚でありながら気品ある味わいを描く。「アイラ=ピート」という先入観を静かに裏切るこの個性は、島の多様性を象徴している。運営はディーンストンやトバモリーと同じバーンスチュワート系(ディステル、ハイネケン系)。海に開かれた立地ゆえの塩気と、泉が与える丸みが同居する、通好みの一本だ。
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ブナハーブンBunnahabhain
1881年、ウィリアム・ロバートソンらがアイラ島ポート・アスケイグ近郊に設立した蒸溜所。ヴィクトリア朝の蒸溜ブームの中、周辺に道路や桟橋まで整備して村ごと築かれた歴史を持つ。アイラ島の他蒸溜所と異なりピートを使わない非泥炭系原酒を主体とすることで知られ、シェリー樽熟成による複雑な味わいが特徴。1963年に蒸溜器を倍増し、近年はCVHスピリッツ傘下で運営されている。
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ラフロイグ、ラガヴーリン、ボウモア。アイラ島の蒸溜所は海に向いた壁に黒い大文字で名を掲げる。船のための標識だったと語られるその表示を、蒸溜所が自前の桟橋と貨物船を持っていた時代の記録からたどる。

同じアイラを「正露丸」と嫌う人と絶賛する人がいるのは、好みの差だけではない。調べられた範囲で二人の嗅覚受容体の対立遺伝子は3割が機能的に異なり、ピート香を象徴するグアイアコールでは、その差が実際に数字になっている。

アイラといえば強烈なピート。でもブナハーブンは、その島でほとんど煙を焚かない。仕込み水にすら泥炭を寄せつけないこの蒸溜所が、なぜ「海の甘さ」で通に愛されるのか。造りと歴史からたどる。

ブナハーブン、カリラ、ブルックラディ——スコッチの銘柄名が読めないのは、英語ではなくゲール語だから。代表銘柄の名前の意味と読み方、あえて改名しない理由を、土地の風景とともに読み解く。