なぜバランタインは「完璧なブレンド」と称えられるのか——食料品店から始まり、紋章に四大元素を刻んだ物語
スーパーの定番ファイネストから、憧れの17年・30年まで。1827年の食料品店から世界2位のスコッチへ上りつめたバランタイン。約50のモルトを束ねる「完璧なブレンド」と、紋章に刻んだ四大元素の物語を読み解く。
スーパーの棚に並ぶ「ファイネスト」から、バーの奥で輝く17年、そして特別な日の30年まで。バランタインは、気軽な一杯にも、一生ものの憧れにも同じ名前で応える、不思議なスコッチだ。世界で2番目に売れるブレンデッドスコッチでありながら、なぜこれほど「格」を保ち続けられるのか。その理由は、グラスの中だけでなく、約200年の物語と、ボトルに刻まれた紋章の中にある。
食料品店から始まった「完璧なブレンド」
物語は1827年、農家の息子だったジョージ・バランタインが、エディンバラのカウゲートに小さな食料品店を開いたことから始まる。彼は店でウイスキーを客に量り売りし、やがて「客の好みに合わせて樽を混ぜる」ことに取り組むようになる。1865年にはグラスゴーに大きな店を構え、本格的にブレンドを手がけるようになった。息子を事業に迎えて「ジョージ・バランタイン&サン」を名乗り、1895年にはヴィクトリア女王からロイヤルワラント(英王室御用達)を授かる。一介の食料品商が、王室の食卓に選ばれるまでになったのだ。

心臓は、スペイサイドの二つの蒸溜所
バランタインの味を支えるのは、約50種のシングルモルトと4種のグレーンという、途方もない数の原酒だ。その中心=「フィンガープリント(指紋)モルト」と呼ばれるのが、スペイサイドのグレンバーギーとミルトンダフである。グレンバーギーは凝縮したフルーティさと蜜のような甘さで味わいの「心臓」を、ミルトンダフは華やかさとシナモンのようなスパイスで「土台」を担うとされ、この二つが骨格を決める。数十もの原酒を一つの味へまとめ上げる作業は、ブレンダーの記憶と舌だけが頼りだ。だからこそ、ともすれば「シングルモルトより格下」と見られがちなブレンデッドの世界で、バランタインは"完璧なブレンド"と称えられてきた。その心臓であるグレンバーギーは、単体のシングルモルトとしても味わえる。
このコラムの関連
関連するボトル


次に読む

週70時間のバーボン工場と、12人のエンジニア——ウイスキーの現場で争われている「時間」
スコッチとバーボンの現場では、この10年ストライキがくり返されてきた。争われているのは賃上げだけではない。残業、シフト、そして「休暇1日=7時間12分」という計算式だ。

なぜスコッチの蒸溜所は、1回の蒸溜を3分で終えたのか——酒ではなく「スチルの容量」に税をかけた法律
18世紀の末から19世紀の初め、ローランドには1回の蒸溜を3分で終えた蒸溜所があった。税額が造った酒の量ではなく「スチルの容量」で決まったため、造り手は浅く広い皿のようなスチルを回し続けた。制度が酒の形を変えた記録。






