なぜウイスキーの「〇〇フィニッシュ」はこんなに増えたのか——二つの樽で仕上げる追加熟成のしくみ
売り場を賑わす「ポートウッド」「シェリーカスクフィニッシュ」。ここ十数年で急増したこの追加熟成(カスクフィニッシュ)とは何をしているのか。樽を移し替えて仕上げる二重熟成のしくみ、生みの親のバルヴェニーと普及させたグレンモーレンジィ、そして広まった背景と落とし穴までを読み解く。
ウイスキー売り場を歩いていると、「ポートウッド」「シェリーカスクフィニッシュ」「ソーテルヌ樽」といった横文字が、ここ十数年でめっきり増えたことに気づく。ラベルを飾るこの「〇〇フィニッシュ」とは、いったい何をしているのか。そしてなぜ、これほど多くの銘柄が二つ目の樽をわざわざ使うようになったのか。
「フィニッシュ」とは樽を移し替えること
答えはシンプルだ。カスクフィニッシュ(ウッドフィニッシュ、追加熟成、二重熟成などとも呼ばれる)とは、ある樽で熟成させたウイスキーを、瓶詰めの前に別の種類の樽へ移し替え、数か月から数年ほど「仕上げ」の熟成を追加する工程を指す。
たとえばバーボン樽(アメリカンオークの空き樽)でおおよその熟成を終えた原酒を、シェリーやポート、赤ワインなどを詰めていた樽に移す。すると、最初の樽が与えた骨格の上に、二つ目の樽由来の香りや甘み、色合いが重なる。土台と仕上げで別々の樽を使うことから「二重熟成」と表現されるわけだ。ポイントは、あくまで追加の工程だという点にある。丸ごと最初からシェリー樽で寝かせる「フルシェリー熟成」とは区別される。
生みの親はバルヴェニー、広めたのはグレンモーレンジィ
この手法を現代的な技として確立したのは、スペイサイドのバルヴェニー蒸留所のモルトマスター、デヴィッド・スチュワート氏だとされる。1982年、彼はアメリカンオークで熟成した原酒をオロロソ・シェリー樽へ移して短期間仕上げる実験を始めた。その成果は1983年に「クラシック」として世に出て、1993年に「ダブルウッド」へと改名された。今日おなじみの一本である。

The Balvenie DoubleWood 12 Year Old
🏴 スコットランド ・ バルヴェニー蒸留所 ・ シングルモルト ・ 12年 ・ 40%
一方、この手法を看板シリーズとして広く定着させたのが、ハイランドのグレンモーレンジィだ。同蒸留所は2007年に「エクストラ・マチュアード」の名で、ポート樽仕上げのキンタ・ルバン、シェリー樽仕上げのラサンタ、そしてソーテルヌ(フランスの貴腐甘口ワイン)樽で仕上げるネクター・ドールを揃え、フィニッシュ違いのラインナップという売り方を広めた。ネクター・ドールは、バーボン樽で10年ほど寝かせた原酒を、さらに2年ほどソーテルヌ樽で追熟させたものだ。

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