なぜローヤルサルートは「21年」から始まるのか——戴冠式の21発の礼砲を、熟成年数に置き換えたスコッチ
多くのブランドで最上位の「21年」が、ローヤルサルートでは入門の一本。1953年のエリザベス2世戴冠を祝い、王室礼砲の基本「21発」を熟成年数に置き換えた由来と、陶磁器フラゴンの色、「62発」「53種」の数字まで読み解く。
たいていのウイスキーブランドにとって、「21年」は棚のいちばん上に置く数字だ。ところがローヤルサルート(ロイヤルサルートとも表記される)では、21年がいちばん手前、つまり入門の一本になっている。そこから上には、それより古い年数や限定品が並ぶ。
なぜ、わざわざ21年から始めるのか。答えは、1953年のロンドンに鳴り響いた大砲の音にある。この記事では、名前と年数がひとつの数字でつながったいきさつと、陶磁器のボトルに込められた意味をたどる。
1953年、新しい女王への贈り物
1953年6月2日、ロンドンのウェストミンスター寺院でエリザベス2世の戴冠式が行われた。ローヤルサルートは、この戴冠を祝うために生まれたブレンデッドスコッチだ。
造ったのは、アバディーン生まれのブレンド商シーバス・ブラザーズ。同社は1949年にカナダのシーグラムの傘下に入っており、ブランドもシーグラムの持ち物として出発した。ウイスキー事典サイト Scotchwhisky.com(Whiskypedia)によれば、開発を担ったのは当時のマスターブレンダー、チャールズ・ジュリアンだという。
日本でこのブランドを展開するペルノ・リカール・ジャパンは「ローヤルサルート」と表記し、名前の由来を「ロンドン塔から放たれた21回の皇礼砲」と説明している。
礼砲の「21」を、熟成年数の「21」に
「ロイヤル・サルート(Royal Salute)」は英語で、王室に捧げる礼砲を指す。イギリスでは、君主の慶事に撃つ礼砲は21発が基本とされる。撃つ場所によってはここに数が加算され、ロンドン塔では最終的に62発になる(後述)。21は、あくまで王室礼砲の基本の数だ。
シーバス・ブラザーズはこの数字を、そのまま熟成年数に置き換えた。ボトルに詰める原酒は、モルトもグレーンもすべて最低21年熟成。祝砲を21発撃つ代わりに、21年眠らせたウイスキーで新しい女王を祝ったわけだ。
ここで大事なのは「最低」の一語だ。ウイスキーの年数表記は、混ぜた原酒のうちいちばん若いものの年数を指す。つまり1953年の最初のボトルには、1932年以前に樽へ詰めた原酒しか使えなかった。Scotchwhisky.com も、最初のブレンドには1920〜30年代に蒸溜された原酒が使われたと記している。名前を決めた時点で、熟成の下限まで決まってしまう。これはかなり大胆な約束だ。
Royal Salute 21 Years Old The Signature Blend
🏴 スコットランド ・ アベラワー蒸留所ほか ・ ブレンデッド ・ 21年 ・ 40%
陶磁器のフラゴンと、王冠の宝石の色
ローヤルサルートといえば、ずんぐりした陶磁器のボトルを思い浮かべる人が多いだろう。この形の瓶は「フラゴン」と呼ばれ、ブランドは誕生以来ずっとこれを使い続けている。
Scotchwhisky.com によると、最初のフラゴンは緑色で、英国の陶磁器メーカー、ロイヤルドルトンが製作した。初期のボトルには王室の紋章が描かれていたが、のちにシーバス・ブラザーズの紋章に替えられている。
色はその後に増えていった。茶色は1950年代半ばに登場して1991年に姿を消し、青は1960年、赤(バーガンディ)は1985年ごろに加わった(年は資料によって1年ずれる)。のちに緑・青・赤はエメラルド・サファイア・ルビーと呼ばれるようになり、王冠を飾る宝石を思わせる名前になった。ボトルは単なる器ではなく、それ自体が王室の物語を背負っているのだ。
「62発」と「53種」——数字で語り続けるブランド
このブランドは、その後も数字で物語を語り続けている。
たとえば「ローヤルサルート 62ガンサルート」という上位品。62という数は、ロンドン塔の礼砲に由来する。英国政府の説明によれば、王室の礼砲は通常21発だが、ロンドン塔は王宮でもあるため20発が加わり、さらにシティ・オブ・ロンドンの忠誠を示す21発が足される。21+20+21で、ロンドン塔の礼砲は62発になるのだ。
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