なぜサントリーは約1.6兆円でジムビームを買ったのか——キリンとの統合破談から4年、「洋酒で世界へ」の賭け
2014年、サントリーは米ビーム社を負債込み約160億ドルで買収した。縮む国内市場、キリンとの統合破談、以前からの販売提携、伸びるウイスキー。発表資料と当時の報道から、日本の会社がバーボンの雄を買った理由をたどる。
居酒屋のハイボールに使われるジムビームと、山崎や角瓶は、いま同じグループの商品だ。ラフロイグも、メーカーズマークも、カナディアンクラブも同じ傘の下にある。
きっかけは2014年1月。サントリーホールディングスが、アメリカの蒸溜酒大手ビーム社を約160億ドル(当時の報道で約1兆6,500億円)で買うと発表した。
なぜサントリーは、これほどの金額を払ってまでバーボンの会社を買ったのか。この記事では、発表資料と当時の報道から、その理由を順にたどっていく。
2014年1月13日、何が発表されたのか
まず数字を確認しておく。ビーム社の発表資料によると、条件は1株83.5ドルの現金買収。直前の終値(66.97ドル)に25%を上乗せした価格で、ビーム社の純負債を含めた総額は約160億ドルだった。

ビーム社の持ち物は、ジムビーム、メーカーズマーク、ノブクリークのバーボン、スコッチのティーチャーズとラフロイグ、カナディアンクラブ、コニャックのクルボアジェ、テキーラのサウザなど。ここにサントリーの山崎、白州、響、角瓶、ボウモアが加わる。両社の蒸溜酒の売上は合わせて年43億ドル超となり、プレミアム蒸溜酒で世界3位の規模になる、と説明された。
買収が完了したのは2014年4月30日。会社は「ビームサントリー」として再出発した。
理由1:国内だけでは伸びない
背景にあるのは、日本の酒の市場そのものだ。国税庁は、国内の酒類の課税数量が1999年度をピークに減り続けていると説明している。理由として挙げられているのは、少子高齢化と人口減少だ。
国内でどれだけ頑張っても、市場が縮めば伸びしろは限られる。サントリーはこの買収より前から、海外で成長の場を探していた。2009年にフランスの飲料会社オランジーナ・シュウェップスを、2013年にはイギリスのルコゼードとライビーナを買っている。ただ、これらはソフトドリンクの話だ。
当時の報道によれば、2012年12月期の売上高は約1兆8,500億円で、海外の比率は約20%。サントリーは「売上高2兆円・海外比率25%」を目標にしていて、ビーム買収で達成できる見込みだとされた。
理由2:キリンとの統合が、白紙に戻っていた
もう一つの伏線が、キリンとの経営統合の破談である。
2009年、両社は統合に向けて交渉していた。だが2010年2月、キリンが交渉を打ち切る。報道によれば、統合比率をめぐる両社の主張には大きな開きがあった。さらに、サントリー株の約9割を持つ創業家の資産管理会社が、統合後にどう影響力を持つかでも折り合えなかった。
国内で手を組み、規模で世界と戦う道は、これで閉じた。残ったのは、自分で海外の会社を買う道だった。
断っておくと、「破談したからビームを買った」と会社が説明したわけではない。ただ、統合の失敗から4年後に大型の海外買収が来た、という順番は押さえておく価値がある。
理由3:もともと、取引相手だった
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