なぜウイスキーは食事に合わせるのが難しいと言われるのか
ワインには料理と合わせる「マリアージュ」の文化があるのに、ウイスキーではあまり聞かない。なぜ食事に合わせるのが難しいと言われるのか。犯人であるアルコール度数、そして味覚の疲労、さらにワインと共通する「強さを合わせる」原則から、家庭で試せるペアリングのコツまでを読み解く。
バーで一杯のウイスキーを傾けるとき、多くの人は「つまみ」は考えても「料理と合わせる」とはあまり考えない。ワインには料理との組み合わせを指す「マリアージュ」という言葉があり、ソムリエが一皿ごとに一杯を選ぶのに、ウイスキーではそうした光景をめったに見ない。なぜウイスキーは食事に合わせるのが難しいと言われるのか。
犯人は「アルコール度数」
最大の理由は、度数の高さにある。ワインの多くがアルコール分12〜14%ほどなのに対し、ウイスキーは40%以上が標準で、カスクストレングスなら60%前後にもなる。度数の高い酒は、それだけで料理の繊細な風味を覆い隠してしまいやすい。逆に、脂や旨みの強い料理を食べたあとでは、ウイスキーがやけに苦く、とげとげしく感じられることもある。
もう一つの壁が「味覚の疲労(パレット・ファティーグ)」だ。強い一杯を続けて飲むと、舌が刺激に慣れてしまい、料理の味も酒の味もぼやけてくる。ワインのようにグラスを重ねながら食事を進める、という飲み方がしにくいのである。
原則はワインと同じ
とはいえ、「難しい」は「不可能」ではない。合わせ方の原則は、じつはワインと大きく変わらない。鍵は、酒と料理の“強さ”を釣り合わせることだ。軽い料理には軽い酒を、力強い料理には力強い酒を。60%のウイスキーを淡いサラダに合わせれば料理は消し飛ぶが、濃厚な一皿となら互角に渡り合える。
組み合わせの方向性は大きく二つ。似た香りを重ねて調和させる「補完」と、対照的な要素をぶつけて引き立て合う「対比」である。
具体例で考える
補完の好例が、シェリー樽で熟成させたウイスキーとダークチョコレートだ。シェリー樽のウイスキーはドライフルーツやスパイスを思わせる風味を帯び、カカオ70%以上のチョコが持つほろ苦さやタンニンと響き合う。まるでフォレノワール(黒い森のケーキ)を口にしたような余韻が生まれる。

The Macallan 12 Year Old Sherry Oak
🏴 スコットランド ・ ザ・マッカラン蒸留所 ・ シングルモルト ・ 12年 ・ 43%
対比の代表格は、ピートの効いたアイラのウイスキーとブルーチーズ。ロックフォールやスティルトンの強烈な塩気と個性は、煙と潮を思わせるアイラの香りに真っ向から拮抗し、互いを高め合う。
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