世界一高いウイスキーはいくら?——約4億円のマッカラン1926と、記録を塗り替えてきたボトルたち
世界一高いウイスキーはいくら?2023年に約4億円で落札されたマッカラン1926を頂点に、山崎55年・軽井沢・イチローズモルトのカードシリーズ、そして熟成85年の世界最古まで、実際に成立した「最高額」を事実で整理します。
「世界一高いウイスキーって、いったいいくらするの?」——ふとした好奇心で検索したことがある人は多いはずだ。答えはニュースの見出しを飾るほど桁外れで、しかもその記録は数年ごとに塗り替えられてきた。
この記事では、オークションで実際に落札された「世界一高いウイスキー」の頂点と、その値段がどう吊り上がってきたのか、日本のウイスキーがどこまで肩を並べているのか、そしてなぜそこまでの値がつくのかを、事実に基づいて整理する。あわせて「世界一高い」と喧伝される話の“落とし穴”にも触れておきたい。
頂点は約4億円——マッカラン1926
現在(2026年時点)の世界記録は、ザ・マッカラン 1926 バレリオ・アダミ 60年。2023年11月18日、ロンドンのサザビーズで**£2,187,500**、当時のレートで日本円にしておよそ4億円で落札された。ウイスキーはもちろん、ワインを含めても「オークションで売られた1本のボトル」として史上最高額とされる。
このボトルの何がそこまで特別なのか。1926年に蒸留され、シェリー樽で60年という途方もない歳月を経て、1986年にわずか40本だけ瓶詰めされた。マッカランがこれまでに世に出した中でも最古のヴィンテージだ。40本はいくつかのラベル違いに分かれており、記録を出したのはイタリアの画家バレリオ・アダミが手がけたラベルの1本だった。
記録はこうして塗り替えられてきた
面白いのは、この「1926年」が一度きりの奇跡ではなく、繰り返し記録を更新してきた点だ。2010年代後半からオークションで注目を集め、2019年10月にはサザビーズで同じ1926年(ファイン&レアのラベル)が**£1,452,000**で落札され、当時の世界記録に。それをわずか4年後の2023年に、自分自身が塗り替えた形になる。
同じ蒸留・同じ年の原酒でも、ラベルの作家や保存状態、来歴(誰が持っていたか)によって値がつく——ウイスキーが「飲み物」であると同時に「コレクターズアイテム」でもあることを、これほど雄弁に語る例はない。値段の桁が動く理由についてはなぜ「閉鎖された蒸留所」のウイスキーは高値がつくのかやなぜウイスキーは「投資対象」になったのかもあわせて読んでほしい。
金額順に並べてみる——頂点まわりの顔ぶれ
文章だけだと桁の感覚がつかみにくいので、実際に成立した落札額を円換算の高い順に並べておく。金額は各回に報じられた落札額で、円換算は落札当時のレートによる概算だ。
- ザ・マッカラン 1926 バレリオ・アダミ 60年……£2,187,500/約4億円(2023年11月・サザビーズ ロンドン)
- ザ・マッカラン 1926 ファイン&レア 60年……£1,452,000/約2億円(2019年10月・サザビーズ ロンドン)
- イチローズモルト「カードシリーズ」54本セット……HK$11,890,360/約1億6,000万円(2020年11月・ボンハムズ香港)※1本ではなくセットでの金額
- 山崎55年……HK$6,200,000/約8,500万円(2020年8月・ボンハムズ香港)
- ザ・マッカラン ザ・リーチ 81年……£300,000(うちハンマープライス£240,000)/約5,000万円(2022年10月・サザビーズ ロンドン)※通常版288本とは別に仕立てられた、世界に1本だけの特別仕様
- 軽井沢52年 カスク#5627……£363,000/約4,700万円(2020年3月・サザビーズ ロンドン)
こうして並べると、頂点のマッカラン1926がポンド建てでも2位の約1.5倍と、頭ひとつ抜けていることが分かる。逆に言えば、億の世界に届くボトルは世界中を見渡してもごく少数だということでもある。
日本のウイスキーも桁が違う
高値の世界はスコッチだけの話ではない。日本のウイスキーも、いまや同じ土俵に立っている。
象徴が山崎55年だ。2020年に100本限定で発売され、日本国内では抽選・税別300万円という「定価」自体がすでに驚きだった。中身は1960年蒸留のミズナラ樽と1964年蒸留のホワイトオーク樽を核にした55年もの。その税別の定価に対して28倍を超える金額が、発売と同じ年に香港のオークションでついたことになる。
もう一つ忘れてはならないのが、閉鎖された幻の蒸留所軽井沢だ。落札された52年は1960年蒸留のカスク#5627で、干支にちなんだ「子(ねずみ)」のラベルをまとった41本のうちの1本だった。閉鎖蒸留所の原酒がなぜここまで求められるのかは、なぜ日本のウイスキーは「買えない酒」になったのかとも地続きの話だ。
そして「1本」ではなく「揃い」で世界を驚かせたのが、同じく閉鎖蒸留所・羽生の原酒による**イチローズモルト「カードシリーズ」である。トランプ54枚に対応する54本を、一枚ずつ別のシングルカスクから瓶詰めしたシリーズだ。54枚を欠けなく揃えたフルセットは香港のボンハムズで繰り返し記録を作っており、2015年にHK$3,797,500、2019年にHK$7,192,000(約1億円)、そして2020年11月にはHK$11,890,360(約1億6,000万円)**に達した。5年で3倍以上である。
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