Tin Shed
オーストラリア南部、アデレード・ヒルズのネアンに立つ、シングルモルト「イニクィティ」で知られる蒸留所である。前身は、2005年にイアン・シュミットら3組の夫婦がアデレードで始めたサザン・コースト蒸留所。80リットルのスチルを自作してモルトウイスキーとラムを造ったが、パートナー間の対立と法的紛争の末に清算に至った。残った2組が新会社ティン・シェッド・ディスティリング・カンパニーを興し、2013年に同じ建物で蒸留を再開した。イアン・シュミットとヴィック・オーロウという長年の盟友が運営する。仕込みから発酵、蒸留、熟成まで自前で手がけ、シングルモルトを「頂点の製品」と位置づける。2023年に世界最優秀シングルカスク・シングルモルトを受けた実力派だ。
ティン・シェッドは、仕込み(マッシング)と発酵を自前で行ってウォッシュを造り、蒸留から熟成までを一貫して手がける。伝統的で手仕事の造りが身上で、多くの工程をイアン・シュミット自身が担う。ウイスキー生産の大半をシングルモルトに充て、イアンはこれを小さな蒸留所が勝負できる「頂点の製品(エイペックス・プロダクト)」と呼ぶ。派手な宣伝ではなく、製品そのもので語らせる姿勢を貫く。
ティン・シェッド・ディスティリング・カンパニーは、2012年に頓挫したアデレードのサザン・コースト蒸留所の灰の中から生まれた。サザン・コーストは、ウイスキー愛好で意気投合した3組の夫婦が2005年、パートナーの一人イアン・シュミットの所有地に80リットルのスチルを建てて始めた造りだった。だが一部の夫婦との関係がこじれ、激しい対立と長い法的紛争の末に清算人が入った。残った2組が新会社と新名称を立ち上げ、2013年に同じ建物で従来通りの造りを再開した。
蒸留所はオーストラリア南部、アデレード・ヒルズのネアンに立つ。当初の「ティン・シェッド(トタン小屋)」はアデレード西部にあり、イアンが営むもう一つの事業、旗竿の製造工場に隣接していた。イアンは旗竿業から手を引いてウイスキーに専念し、盟友ヴィックとともにアデレード・ヒルズの別のトタン小屋へと蒸留所を移した。
シングルモルト「イニクィティ」を核に、ラム「レクイエム」やウォッカ「ピョートル」を展開する。イニクィティは2023年のワールド・ウイスキー・アワードで、最優秀シングルカスク・シングルモルト(エイジ・ステートメントなし)のカテゴリー・ウィナーに輝いた。逆境から再起し、製品の質で評価を勝ち取った南豪州の実力派だ。

この蒸留所が属する地域
スコットランド・アイルランド・アメリカ・カナダ・日本の五大産地以外にも、世界各地でウイスキー造りが広がっている。インドは消費量世界最大市場を背景にアムルットやポール・ジョンといった評価の高いシングルモルトを生み、台湾のカバランは高温多湿な気候を生かした急速熟成で国際賞を席巻した。オーストラリア、フランス、ドイツ、北欧諸国でも個性的なクラフト蒸留所が台頭している。
世界のウイスキーを深掘りする →地理ではなく味わいで繋がる、別の産地の蒸留所。