アードベッグ vs ラガヴーリン——アイラ南岸の二大スモーキー、「鋭い煙」と「甘い煙」はどう違う?
隣どうしなのに味は正反対。アードベッグとラガヴーリン、二つのアイラモルトがなぜ違うのかを、立地・蒸留・度数・熟成から読み解き、最初の一本の選び方まで案内する。
アイラ島の南岸に、歩いて回れるほどの距離で肩を並べる二つの蒸溜所がある。アードベッグとラガヴーリン。どちらも「スモーキーの代名詞」として名前が挙がるが、実際にグラスを傾けると、その煙はまるで別物だ。この記事では、二つのアイラモルトがなぜ違う味になるのかを、立地・造り・度数・熟成の面から読み解き、最初の一本にどちらを選ぶべきかまで案内する。
隣どうしなのに、性格が正反対
アードベッグとラガヴーリンは、ラフロイグを加えた「キルダルトン三兄弟」として、アイラ島南岸に並んで建つ。創業はアードベッグが1815年、ラガヴーリンが1816年と、ほぼ同時期。同じ海風を受け、同じアイラのピートを焚きながら、二つはまったく違う個性へと育った。
その違いは、単純な「ピートの強さ」だけでは説明できない。麦芽の煙たさを示すフェノール値は、アードベッグが約55ppm、ラガヴーリンが約35ppm。数字だけ見ればアードベッグのほうが上だが、飲んだときの印象は「アードベッグ=鋭く突き刺す煙」「ラガヴーリン=濃く包み込む煙」と、質そのものが分かれる。鍵は蒸留の造りにある。
味を分けるのは「蒸留のしかた」
アードベッグのスピリッツスチルには、**ピュリファイアー(精留装置)**という珍しい仕掛けが付いている。重い成分を蒸留器へ戻して還流を強め、そのぶん銅との接触を増やすため、あれほど強烈にピートを焚きながら、酒質はむしろクリーンで、レモンやライムのような柑橘の鮮烈さが煙の奥から立ち上がる。強い煙とみずみずしさが同居する——これがアードベッグの正体だ。

対するラガヴーリンは、アイラでもとりわけゆっくり蒸留することで知られる。ずんぐりとした洋梨形のポットスチルと、時間をかけたゆっくりの蒸溜が、オイリーで肉厚な、甘みを帯びた重厚な煙を生む。フラッグシップの16年は、その原酒を長期熟成でまろやかに束ねた一杯。堂々とした風格から「アイラの巨人」と呼ばれるのも納得の、どっしりとした飲み口だ。

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