ウイスキーの「ppm(フェノール値)」とは——数字が大きい=煙が強い、とは限らない理由
ラベルで見かける「40ppm」「Octomore ○○ppm」。実はこの数字、グラスの中の煙の強さではなく“麦芽”の測定値です。ppmが何を測った数字か、なぜ数字どおりに煙たくならないのか、読み方を整理します。
ウイスキーのスペックやラベルで、ときどき「40ppm」「Octomore ○○ppm」といった数字を見かけます。とくにピートの効いたスコッチでは、この数字が大きいほど「煙が強い」証のように語られがちです。でも実際には、ppmの数字が3桁のウイスキーが、数字の小さいウイスキーの何倍も煙たく感じるとは限りません。
この記事では、ppm(フェノール値)とは何を測った数字なのか、なぜ数字どおりの煙の強さにならないのか、そしてこの数字をどう読めばいいのかを整理します。
ppmとは「麦芽」に含まれるフェノールの量
ppmは parts per million(百万分の一)の略で、ピート(泥炭)を焚いて乾燥させた麦芽に、どれだけフェノール化合物が残っているかを示す濃度です。ピートを燃やした煙に含まれるフェノール類が、乾燥中の大麦麦芽に吸着することで、あの独特のスモーキーな香りのもとになります。
ここで大事なのは、ppmが測っているのはグラスの中の液体ではなく、仕込みに使う前の「麦芽」の段階だということ。つまり「50ppmのウイスキー」という表現は、正確には「50ppmの麦芽から造られたウイスキー」を指しています。この一点を押さえるだけで、数字の見え方が変わります。

主な蒸留所のppm(麦芽段階の目安)
蒸留所ごとに公表されている麦芽のフェノール値には、資料によってばらつきがありますが、おおまかな目安は次のとおりです。
- ブルックラディ(クラシック)・ブナハーブン(標準):ほぼノンピートで2ppm前後
- ボウモア:25ppm前後
- ラフロイグ:40ppm前後
- ラガヴーリン・カリラ・アードベッグ:おおむね35〜55ppm前後
- オクトモア(ブルックラディ蒸留所):80ppmから、リリースによっては300ppm超
オクトモアの「8.3」は麦芽で309.1ppmに達し、世界一ピーティなシングルモルトとして知られています。数字だけを見ると、ボウモアの10倍以上ということになります。
このコラムの関連
関連するボトル


次に読む

なぜウイスキーの生産量は「純アルコール」で数えるのか——「年1,500万リットル」はボトル何本分? 税金と度数が決めた物差し
蒸溜所の「年間生産能力1,500万リットル」は、瓶に詰める液体の量ではない。水を除いた純アルコール(LPA)の量だ。度数が工程ごとに変わり、税金も純アルコールに掛かるから。ボトル本数への換算法と、日本の酒税との意外な共通点まで解説する。

バーボン樽熟成ウイスキーのおすすめ5選——バニラの甘さは「何回目の樽か」で変わる。樽の甘さ・素顔・煙で選ぶ
スコッチの多くを支えるのに、ラベルではあまり目立たない「バーボン樽」。バニラやココナッツの甘さがどこから来るのか、ファーストフィルとリフィルで何が変わるのかを整理し、オーヘントッシャン アメリカン・オークからラフロイグ10年まで、樽の甘さ・蒸溜所の素顔・煙の3つの軸で5本を紹介します。






