
Laphroaig
「好きか、嫌いか」——ラフロイグほど意見を二分するモルトはない。1815年、アレックスとドナルドのジョンストン兄弟が創業。キルブライド貯水池から引くピートを通った水が、ヨード、海藻、そして正露丸と評される強烈な薬品香の源となる。いまも一部にフロアモルティング(自家製の床式製麦)を守り、島のピートを自ら焚く姿勢が、その揺るぎない個性を支えている。英国王室の御用達(かつてのチャールズ皇太子が愛したことで知られる)という格式を持ちながら、味わいはどこまでも野趣に満ちる。潮としぶきをそのまま舐めるような一杯は、初心者を突き放し、愛好家を離さない。現在はビーム サントリーの傘下。アイラの薬品香を語るとき、その中心には常にこの名がある。
ラフロイグ最大の特徴は、アイラ産の手切りピートを用いた自社フロア製麦だ。必要な麦芽の約2割を自社で製麦し、フェノール値50〜60ppmまでピートを焚き込む。地元の泥炭を比較的低温で10〜12時間燻し、その後15〜18時間かけて温風で乾かすことで、正露丸に例えられる独特の「薬品的(メディシナル)」なスモーキーさが生まれる。この個性は19世紀末には既に評判となり、ラフロイグを唯一無二の存在たらしめた。
ラフロイグ蒸留所は、1815年、ドナルドとアレクサンダーのジョンストン兄弟によって、アイラ島南岸のポート・エレン近郊に創業した。ジョンストン家はクラン・ドナルドの流れを汲む一族で、兄弟は1810年頃からこの地で農業を営んでいたとされる。1836年、ドナルドが兄弟の持ち分を買い取り、単独で経営を握った。ジョンストン家最後の当主イアン・ハンターは、子を持たぬまま1954年に没し、蒸留所を女性支配人ベシー・ウィリアムソンに遺した。現在は、大阪の企業サントリー・ホールディングス傘下のサントリー・グローバル・スピリッツが所有・運営する。
蒸留所はスコットランド、アイラ島南岸、ロッホ・ラフロイグと呼ばれる小さな入り江の奥に立つ。海に面したこの立地で、熟成庫は潮風にさらされ、原酒に海のニュアンスを与える。仕込みには、島のピートを含んだ水を用いる。ハイランドの大手が近代化に舵を切るなか、ラフロイグは海辺での熟成やフロア製麦といった、手仕事に根ざした造りを今も守り続けている。
定番の「ラフロイグ10年」を核に、「クォーターカスク」「ロア」「ラフロイグ25年」などを展開する。かつては英国王チャールズ3世(皇太子時代)の王室御用達も受けた。正露丸やヨードを思わせる強烈な個性は、好き嫌いを分けつつも熱狂的なファンを世界中に持つ。海辺の熟成と手仕事のフロア製麦を守る、アイラを代表する造り手である。




Laphroaig Cairdeas 2025 Lore Cask Strength
🏴 スコットランド ・ ラフロイグ蒸留所 ・ シングルモルト ・ NAS ・ 59.6%






この蒸留所が属する地域
スコットランド西岸の小島で、潮風と豊富なピート(泥炭)を生かした強烈にスモーキーな個性で知られる。ラフロイグ、アードベッグ、ラガヴーリン、ボウモアなど「アイラモルト」の名で世界的に知られる蒸留所が集中し、正露丸や消毒液に例えられるほど個性的な薬品香・ヨード香が特徴とされる。
アイラを深掘りする →地理ではなく味わいで繋がる、別の産地の蒸留所。