ウイスキーはどうやって造られるのか——大麦から琥珀色の一杯まで、5つの工程でわかる製法の全体像
グラスの中の琥珀色は、もとをたどれば無色で香りもない「大麦の酒」だった。ウイスキーができるまでを製麦→糖化→発酵→蒸留→熟成の5工程でたどり、各工程が味にどう効いているのかまでやさしく読み解く、造りの全体像がわかる入門ガイド。
グラスの中で琥珀色に輝くウイスキー。その一杯は、もとをたどれば無色透明で、香りもほとんどない「大麦の酒」から始まる。原料はごくシンプルなのに、なぜあれほど複雑な香味が生まれるのか。答えは、大きく5つの工程それぞれに隠れている。この記事では、モルトウイスキーができるまでを「製麦→糖化→発酵→蒸留→熟成」の順にたどり、各工程が味にどう効いているのかまで、やさしく読み解いていく。
第1工程:製麦(モルティング)——大麦を「甘い麦芽」に変える
出発点は大麦だ。ただし、粒のままではデンプンを取り出せない。そこで大麦を水に浸して発芽させる。発芽の途中で、デンプンを糖に変える酵素が生まれるからだ。ほどよく芽が出たところで熱風で乾燥させ、発芽を止める。これで「麦芽(モルト)」が完成する。
この乾燥の熱源に「ピート(泥炭)」を焚くと、煙の香り成分が麦芽に移り、あの独特のスモーキーな個性が生まれる。アイラ島のウイスキーが薬品的な煙の香りをまとうのは、この工程に理由がある。
第2工程:糖化(マッシング)——デンプンを糖に変え、甘い麦汁をつくる
次に、乾燥させた麦芽を細かく砕き、温水と混ぜ合わせる。すると麦芽の酵素が働き、デンプンが糖へと分解されていく。こうしてできた甘い液体を漉し取ったものが「麦汁(ウォート)」だ。まだアルコールはなく、麦茶を甘くしたような、優しい甘みのある液体である。
第3工程:発酵(ファーメンテーション)——酵母が糖をアルコールに
麦汁を発酵槽に移し、酵母を加える。酵母は糖を食べてアルコールと炭酸ガスに変えていく。48〜96時間ほどかけて、アルコール度数7〜10%ほどの「ウォッシュ」ができあがる。これはいわば、ホップを入れないビールのような液体だ。
この段階は単にアルコールを生むだけではない。発酵の長さや酵母の種類によって、フルーティーな香りや複雑な風味の下地もここで生まれる。造り手が発酵時間にこだわる理由がここにある。
第4工程:蒸留(ディスティレーション)——アルコールと香りを凝縮する
ウォッシュを、銅でできた「ポットスチル」で加熱する。アルコールは水より低い温度で気化するため、立ちのぼる蒸気を集めて冷やし、再び液体に戻す。これを繰り返すことで、アルコール度数と香り成分がぎゅっと凝縮されていく。スコッチのモルトウイスキーは通常2回蒸留する(アイリッシュに多い3回蒸留もある)。
このとき造り手は、蒸気の出はじめと終わりの雑味を切り捨て、真ん中の良質な部分だけを取り分ける。銅の内壁が硫黄由来の雑味を取り除く働きもする。こうして得られる無色透明の原酒が「ニューメイク」だ。スコッチの決まりでは、蒸留時の度数は94.8%未満と定められている。これ以上高くすると原料由来の香味が失われてしまうからだ。
第5工程:熟成(マチュレーション)——樽が「色」と香味の大半を与える
無色だったニューメイクを、オークの樽に詰めて寝かせる。ここでウイスキーは劇的に姿を変える。あの琥珀色も、バニラやドライフルーツのような甘い香りも、その多くは樽から移ってくるものだ。ウイスキーの色や香味の大部分は、この熟成で決まると言われる。
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