なぜウッドフォードリザーブは、ケンタッキーダービーの「公式バーボン」に選ばれたのか——1812年の土地と、スコッチ由来の三回蒸留
1996年生まれの若いブランドが、なぜアメリカ競馬の最高峰の公式バーボンなのか。ケンタッキー最古級の土地・銅のポットスチルによる三回蒸留・正直なブレンド設計から、ウッドフォードが愛される理由を読み解く。
ケンタッキーダービー——アメリカ競馬の最高峰の舞台。その「公式バーボン」を、1996年に生まれたばかりの若いブランドが1999年から担っている。それがウッドフォードリザーブだ。歴史あるバーボンがひしめくケンタッキーで、なぜこの「新顔」が選ばれ、世界中のバーで指名され続けるのか。答えは、ブランドの若さとは裏腹の「古い土地」と、バーボンらしからぬ造りにある。
ケンタッキー最古級の土地に建つ
ウッドフォードリザーブが建つのは、ヴェルサイユ近郊、グレンズ・クリーク沿いの一角だ。ここで蒸留が始まったのは1812年にさかのぼり、1838年に建てられた石造りの蒸留棟は「ケンタッキー最古級の蒸留所」のひとつとして今も残る。2000年には国定歴史建造物(ナショナル・ヒストリック・ランドマーク)にも指定された。
さらにこの地は、「バーボンの父」とも呼ばれる化学者ジェームズ・C・クロウが働いた場所でもある。彼は19世紀半ば、この敷地の蒸留所で、サワーマッシュ発酵・ポットスチル蒸留・樽熟成といった、今日のバーボンの根幹となる工程を科学的に整えていったと伝えられる。ブランド自体は若くても、立っている土地はバーボンの原点にきわめて近い。ブラウンフォーマンが1994年にこの旧ラブロー&グラハム蒸留所を買い戻し、二年をかけて甦らせたのがウッドフォードリザーブだった。
バーボンらしからぬ「銅のポットスチル」と三回蒸留
ウッドフォードを最も特徴づけるのは、スコットランドのフォーサイス社から運ばれてきた銅製のポットスチル(単式蒸留器)だ。バーボンの大半が効率のよい連続式蒸留(カラムスチル)で造られるなか、ここではスコッチのように単式蒸留を、しかも三回繰り返す。この三回蒸留が、雑味を削ぎ落とした華やかでまろやかな原酒を生む。
ただし、ここは正直に押さえておきたい。定番の「ディスティラーズセレクト」は、この蒸留所のポットスチル原酒だけで造られているわけではない。ブラウンフォーマンがシヴリーに構える蒸留所(オールドフォレスターと同じ拠点)のカラムスチル原酒をブレンドして仕上げている。単式の華やかさと連続式の厚みを重ねる設計だと知っておくと、味の像がぶれない。マッシュビルはコーン72%・ライ18%・モルト10%。内側を焦がした新品のアメリカンオーク樽で寝かせ、90.4プルーフ(度数45.2%)で瓶詰めされる。
Woodford Reserve Distiller's Select
🇺🇸 アメリカ ・ ウッドフォードリザーブ蒸留所 ・ バーボン ・ NAS ・ 45.2%
「5つの源」と、選べる表情
ブラウンフォーマンは味を生む要素を「5つの源(穀物・水・発酵・蒸留・熟成)」と呼び、どれかを突出させるのではなく、すべてを重ね合わせることを身上とする。だからディスティラーズセレクトは、バニラ・ドライフルーツ・スパイスがバランスよく折り重なる「優等生」に仕上がる。ロックでもハイボールでも崩れにくく、最初の一本として間口が広い。
もう一歩深い甘みと樽香が欲しいなら、熟成後にもう一度新樽で追熟した「ダブルオークド」がわかりやすい。キャラメルやチョコレートを思わせる濃密さが加わり、ゆっくり味わう夜に向く。ライ麦を主体にした「ライ」まで揃い、同じ思想のまま表情を選べるのもこのブランドの懐の深さだ。
このコラムの関連
関連するボトル
Woodford Reserve Distiller's Select
🇺🇸 アメリカ ・ ウッドフォードリザーブ蒸留所 ・ バーボン ・ NAS ・ 45.2%
関連する蒸留所
次に読む

なぜサントリーは約1.6兆円でジムビームを買ったのか——キリンとの統合破談から4年、「洋酒で世界へ」の賭け
2014年、サントリーは米ビーム社を負債込み約160億ドルで買収した。縮む国内市場、キリンとの統合破談、以前からの販売提携、伸びるウイスキー。発表資料と当時の報道から、日本の会社がバーボンの雄を買った理由をたどる。

なぜベンリアックは、スペイサイドなのにピートを焚くのか——65年眠った蒸溜所と、ブレンドの裏方だった「煙」
華やかなスペイサイドで、毎年「煙の季節」を設けるベンリアック。ピート蒸溜はいつ、なぜ始まったのか。公式年表と資料の食い違いを整理し、本土の泥炭が生む甘い煙と、オリジナル・テン/スモーキー・テンの飲み比べ方まで案内する。


