
WHY THIS TASTE
モルト原酒の比率を極めて高くし、スモールバッチのグレーン原酒と合わせたブレンデッド。熟成はオロロソシェリー樽を主体にバーボン樽を併用し、シェリー樽由来の厚みを前面に出す設計になっている。3回蒸留由来のなめらかな口当たりに、熟した果実味と濃い甘み、深いコクが重なるのが、同じ蒸留所のオリジナルとの最大の差分。40度。

この味を生む蒸留所
ブッシュミルズ蒸留所北アイルランド・アントリム県、ブッシュ川のほとりに立つ「世界最古の免許を持つ蒸留所」である。1608年、ジェームズ1世がこの地区の領主サー・トーマス・フィリップスに蒸留免許を与えたのが起源で、当時すでに広まっていた密造の伝統を公認した形だ。蒸留所としての実質的な創業は1784年、ヒュー・アンダーソンがオールド・ブッシュミルズを登録し、ポットスチルを商標とした。仕込み水はブッシュ川の支流セント・コルムズ・リル。シングルモルトを伝統的な銅製ポットスチルで3回蒸留し、そのなめらかで軽やかな酒質を1930年代以前から守り続ける。ポットスチルの意匠を3世紀にわたりロゴに掲げる、アイリッシュの象徴的存在だ。
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ブッシュミルズBushmills
1608年の蒸留免許にちなみ「現存最古のライセンス蒸溜所」を謳う北アイルランド・アントリム州のアイリッシュ・ウイスキー。実際の創業は1784年で、1885年の火災後に再建されて以降ほぼ継続的に稼働している。第二次大戦後複数回の所有者交代を経て、2014年よりプロキシモ・スピリッツ傘下。2023年には隣接地に新蒸溜所コーズウェイ・ディスティラリーを開設し、単式蒸留器3基による三回蒸留のシングルモルトを主体とする。
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蒸留にまつわる「アルコール」「アランビック」「エリキシル」は、いずれもアラビア語由来。しかも al-kuḥl の原義はまぶたに引く黒い粉だった。酒を戒めた社会で薔薇水の道具として磨かれた蒸留器と、そこから受け継がれた言葉が、ウイスキーのグラスにたどり着くまで。

アイリッシュは3回蒸溜でなめらか、スコッチは2回で力強い——よく語られる違いを、スコッチウイスキー規則2009とアイリッシュウイスキー技術ファイルで確かめると、蒸溜回数もピートも要件ではなかった。条文が実際に縛っているものを並べ直す。

ラベルに刻まれた「1608」は、蒸溜所の創業年ではない。ジェームズ1世が王室に仕えた一人の軍人に与えた地域の蒸留許可と、1784年に生まれた会社。そして別の物差しで「最古」を名乗るキルベガンの話。

アイリッシュの二大定番、ジェムソンとブッシュミルズ。同じ3回蒸留でも、核は「未発芽大麦も使うポットスチル原酒」と「モルト100%の原酒」で別物。南北で分かれた生い立ちと味の違い、飲み方別の選び方を整理します。