ジェムソン vs ブッシュミルズ——アイリッシュ二大ブランド、南の軽快と北のモルトはどう違う?
アイリッシュの二大定番、ジェムソンとブッシュミルズ。同じ3回蒸留でも、核は「未発芽大麦も使うポットスチル原酒」と「モルト100%の原酒」で別物。南北で分かれた生い立ちと味の違い、飲み方別の選び方を整理します。
スーパーや酒販店のアイリッシュウイスキーの棚で、必ずと言っていいほど隣り合っている2本があります。緑のボトルのジェムソンと、白いラベルのブッシュミルズ。どちらも「なめらかで飲みやすいアイリッシュ」の代名詞ですが、生まれた場所も、造り方の核も、味の方向もはっきり違います。この記事では、二大ブランドの生い立ちと造りの違いを整理し、「自分はどちらから買うべきか」まで道筋をつけます。
南のジェムソン——世界で一番売れているアイリッシュ
ジェムソンが公式に創業年としてうたうのは1780年。この年ダブリンのボウ・ストリートに開かれた蒸溜所を、スコットランド・アロア出身のジョン・ジェムソンが率いて大きく育てました(彼が経営を握った正確な経緯には諸説あります)。現在の生産拠点は南部コーク州のミドルトン蒸溜所(1975年に移転)で、ペルノ・リカール傘下のアイリッシュ・ディスティラーズが手がけています。世界で最も売れているアイリッシュウイスキーであり、2019年には年間販売が800万ケースを超えたとされます。
造りの核は「シングルポットスチル原酒」。発芽させた大麦(モルト)と未発芽の大麦を混ぜて仕込み、単式蒸留器で3回蒸留した、オイリーでほのかにスパイシーな原酒です。これに軽やかなグレーン原酒をブレンドすることで、青リンゴを思わせる爽やかさと、するりとした飲み口が生まれます。

北のブッシュミルズ——「世界最古」を名乗る蒸溜所
一方のブッシュミルズは、北アイルランド・アントリム州の小さな村、ブッシュミルズにあります。1608年に国王ジェームズ1世がこの地域の領主トマス・フィリップスに蒸留免許を与えたことから、「世界最古の免許を持つ蒸溜所」を名乗ります。ただし会社としての設立は1784年で、「1608年から今の蒸溜所がそのまま続いてきた」わけではない点は覚えておきたいところです。
造りの核はジェムソンと対照的で、100%発芽大麦(モルト)だけを3回蒸留する、アイルランドでは数少ないモルト主体のスタイル。蒸溜所が自ら蒸留するのはこのモルト原酒のみで、ブレンドに使う軽いグレーン原酒は外部から調達しています。定番の「オリジナル」はモルト原酒にグレーン原酒を合わせたブレンドで、上位の「ブラックブッシュ」はモルト比率をおよそ8割まで高め、オロロソシェリー樽で熟成した原酒を軸にしています。10年・16年・21年といったシングルモルトを揃えているのも、モルトの造り手ならではです。
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