
Ireland
禁酒法や英愛貿易戦争などを経て20世紀に大きく衰退したが、「アイリッシュウイスキーの父」と呼ばれる再興を経て2020年代には蒸留所数が40を超えるまでに回復した。多くは単式蒸留器で3回蒸留する伝統製法を用い、ノンピートの大麦を使うためスコッチに比べて軽やかでまろやかな味わいになりやすい。
12世紀には修道院で蒸留技術が伝わっていたとされ、19世紀末には世界のウイスキー消費の7〜8割をアイルランド産が占めるほどの最大生産地だった。しかし新技術の連続式蒸留機を頑なに拒み単式蒸留にこだわったこと、1919〜1921年の英愛独立戦争に伴う英国の貿易報復、そして最大市場だったアメリカでの禁酒法(1920〜1933年)が重なり、20世紀前半に壊滅的な打撃を受けた。1966年には主要蒸留所が合併してアイリッシュ・ディスティラーズ1社の実質独占状態にまで衰退したが、1987年に学術的な発想からクーリー蒸溜所が開業しこの独占を打ち破って再興が始まった。2020年代には蒸溜所数が40を超えるまでに回復している。
大麦は基本的にノンピートで乾燥させることが多く、スコッチほどスモーキーさが前面に出にくい。単式蒸留器での3回蒸留(ポットスチル・トリプルディスティレーション)を行う蒸溜所が多く、雑味の少ないクリアな原酒が生まれる。アイルランド独自の「ポットスチルウイスキー」は、1785年に導入された麦芽への課税を逃れるため、蒸留所が未発芽の大麦をあえて混ぜ始めたという税制の抜け道が起源とされる。
全体として軽やかで飲みやすい口当たりが特徴とされる。大麦とオーツ麦・小麦を併用する「ポットスチルウイスキー」は、未発芽大麦由来のスパイシーさと、リンゴや洋梨を思わせるクリーミーな質感を併せ持つアイルランド独自のスタイルとして知られる。
アイルランド最大のミドルトン蒸溜所(1975年操業)は、ジェムソン、レッドブレスト、パワーズ、グリーンスポットなど多彩な銘柄を生む一大拠点。北アイルランドのブッシュミルズは世界最古級の歴史を誇り、1987年に開業したクーリー蒸溜所は長年の寡占を打破した。2015年にはダブリン市内で125年ぶりの新蒸溜所ティーリングが誕生している。
The Tyrconnell 10 Year Old Sherry Cask Finish
🇮🇪 アイルランド ・ クーリー蒸留所 ・ シングルモルト ・ 10年 ・ 46%
The Whistler 10 Year Old French Oak Finish Single Malt
🇮🇪 アイルランド ・ ボアン蒸留所 ・ シングルモルト ・ 10年 ・ 46%
The Tyrconnell 10 Year Old Port Cask Finish
🇮🇪 アイルランド ・ クーリー蒸留所 ・ シングルモルト ・ 10年 ・ 46%
The Tyrconnell 10 Year Old Madeira Cask Finish
🇮🇪 アイルランド ・ クーリー蒸留所 ・ シングルモルト ・ 10年 ・ 46%



Roe & Co
アイルランド ・ 2019年

Ahascragh Distillery
ゴールウェイ

West Cork
アイルランド ・ 2003年

Waterford
アイルランド ・ 2015年

Echlinville
北アイルランド ・ 2013年

Kilbeggan
アイルランド ・ 1757年

Killowen Distillery
北アイルランド

Cooley
アイルランド ・ 1987年

Great Northern
アイルランド ・ 2015年

Glendalough
アイルランド ・ 2013年

Clonakilty
アイルランド ・ 2019年

Copeland
北アイルランド ・ 2019年

ジェムソンやレッドブレストを口にしたときの、あのなめらかでオイリーな飲み口。同じ大麦の酒なのに、なぜアイリッシュはスコッチと異なる個性を持つのか。「3回蒸留」と「未発芽大麦」という二つの鍵から、その理由を読み解く。

ウイスキーの入門書に必ず登場する「世界5大ウイスキー」。だがこの括りは公式の定義ではなく、日本で広まった慣習だという。なぜこの5つが特別なのか、それぞれの個性はどう生まれたのか、そして台湾やインドなど「5大」の外側で起きている変化までを読み解く。

ラベルをよく見ると、同じ酒なのに「whisky」と綴るものと「whiskey」と綴るものがある。この一文字の差はどこから来たのか。ゲール語の「命の水」に始まり、19世紀のアイルランドとスコットランドの対抗心、そしてアメリカへ渡った移民までをたどると、たった一文字に酒の歴史が凝縮されていることが見えてくる。

寒い夜の一杯で体がぽかぽかするのは確かなのに、医学は「アルコールそのものでは体は温まらない」と言う。この心地よさと事実のねじれを、血管拡張という錯覚、放熱とふるえの抑制、そして寒冷地での思わぬ危険まで、生理学の視点から読み解く。