
WHY THIS TASTE
1830年代にフランクフォートで蒸溜を始めた、スコットランド出身の医師ジェームズ・C・クロウの名を継ぐ銘柄。彼は前回の発酵液の一部を次の仕込みに戻す「サワーマッシュ」の手法を確立した人物として知られる。現行品はジムビームと同じマッシュビル・同じ酵母を使い、熟成期間だけを短くした最低3年・40度(80プルーフ)で、樽由来の重さが控えめなぶんコーンの甘さと若い穀物感が前に出る。

この味を生む蒸留所
ジムビーム蒸留所ケンタッキー州クラーモント、世界で最も売れるバーボンを生み出す「バーボンの第一家族」ビーム家の本拠である。18世紀末にドイツから移住したベーム家のヤコブ・ビームが1795年頃に最初の樽を売り、以来7代にわたり一族が造りを受け継いできた。1933年の禁酒法撤廃後、ジム・ビームは70歳で独自の酵母を再現し、わずか120日で蒸留所を再建した逸話で知られる。孫のブッカー・ノエは40年以上マスターディスティラーを務め、1987年に世界初のスモールバッチ「ブッカーズ」を世に問うた。コーン主体のマッシュビルと、禁酒法以前から守られる一族の酵母が、甘くまろやかで飲みやすい定番の味を支える。今日ではビーム サントリーのもと、世界中で愛される揺るぎない看板であり続けている。
蒸留所の詳細を見る →このボトルのブランド
オールド・クロウOld Crow
米ケンタッキー州のバーボンブランド。名称はサワーマッシュ製法を確立した蒸溜家ジェームズ・C・クロウ博士に由来し、1830年代にフランクフォートで生み出された。19世紀から20世紀半ばにかけて全米一の売上を誇る銘柄だったが、その後品質低下により人気が低迷。1987年にジム・ビーム社に買収され、現在はジム・ビームと同じマッシュビルで生産されている、歴史あるバーボンブランド。
このブランドの他のボトルを見る →
ジャックダニエルのラベルに書かれた「Sour Mash」。サワー=酸っぱい、ではない。前回の蒸留後に残る酸性の液を継ぎ足して発酵を安定させ、味をそろえる——二世紀にわたるアメリカンウイスキーの知恵を読み解く。

酒が憲法で禁じられた禁酒法の13年間、ウイスキーを合法的に手に入れる道がひとつだけあった——医師の処方箋を持って薬局へ行くことだ。「酒=薬」という古い信仰、処方箋一枚で買えた一パイント、そして薬局チェーンと蒸留所を潤した「例外」まで、禁じることの難しさを読み解く。