「世界一のウイスキー」はどうやって決まるのか——WWA・IWSCなどの品評会と、ジム・マレーの『バイブル』の違い
「世界一のウイスキー」という言葉をよく見かけるが、誰がどう決めているのか。ブラインド審査の国際品評会(WWA・IWSC)と、一人の評論家が書く『ウイスキー・バイブル』の違いから、その称号の読み解き方までを整理する。
「世界一のウイスキー」——広告でも記事でも、この言葉を目にしない月はない。けれど、いざ「誰が、どうやって決めたのか」を尋ねられると、答えられる人は多くない。実は「世界一」にはいくつもの種類があり、それぞれ決め方も意味もまるで違う。この記事では、代表的な決まり方を整理し、その称号をどう受け止めればいいかまでを見ていく。
「世界一」はひとつではない
まず押さえておきたいのは、世界には権威ある品評会がいくつもあり、それぞれが毎年、独自に「その年のベスト」を選んでいるということ。だから同じ年に、複数の銘柄が別々の場所で「世界一」を名乗れる。さらにややこしいことに、品評会とは別に、一人の評論家が書く本のなかで選ばれる「世界一」もある。仕組みが違えば、言葉の重みも違う。なお「世界一“高い”」ボトルの話は別記事にゆずる。
品評会という仕組み——WWAとIWSC
最も分かりやすいのが、専門家パネルによるブラインド審査の国際品評会だ。代表格が ワールド・ウイスキー・アワード(WWA)。ウイスキー専門誌が2007年に始めたもので、銘柄を伏せた状態で審査員が香り・味・余韻・複雑さなどを評価し、シングルモルト、ブレンデッド、バーボンといった部門ごとに段階を追って頂点を決める。2024年の「World's Best Single Malt」はイングランドのボトル、2025年はスペイサイドの グレンアラヒー12年 が選ばれた。

もう一つの雄が IWSC(インターナショナル・ワイン&スピリッツ・コンペティション)。1969年創設と歴史が古く、ダブルブラインドのテイスティングに加えて成分分析まで組み合わせるのが特徴だ。毎年90か国以上から1万点を超える出品が集まり、多数の専門家が分野ごとに審査する。ほかにも ISC(インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ)やサンフランシスコ・ワールド・スピリッツ・コンペティションなど、規模の大きな品評会が並ぶ。いずれも共通するのは、複数の専門家が銘柄を伏せて評価するという設計だ。
もうひとつの「世界一」——一人の評論家の本
これと性格がまったく違うのが、ジム・マレーの『ウイスキー・バイブル』。こちらは品評会ではなく、一人の評論家が世界中のボトルを100点満点で採点し、その年の「World Whisky of the Year」を選んで出す年刊の書籍だ。膨大な数を一人の舌で通す一貫性が魅力である一方、評価はあくまで個人の主観にもとづく。2020年には評の表現をめぐって批判が起き、大手小売やブランド各社が距離を置く騒動もあった。良し悪しは別として、これは「バイブル」が組織による審査ではなく一人の評論家の本であることの裏返しでもある。
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