スコッチとジャパニーズウイスキーは何が違うのか——製法・味わい・ルール・価格で読み解く
山崎や白州が高騰する一方、スコッチは同価格でも手に入りやすい。実は両者は製法の骨格を共有する兄弟だ。成り立ち・造りの流儀・味わいの傾向・ルールの重み・価格の5つの角度から、その決定的な違いと選び方を読み解く。
日本の「山崎」や「白州」が世界中で奪い合いになり、価格も高騰している。一方で本場スコッチには、同じくらいの値段でずっと手に入りやすい銘柄がたくさんある。ではジャパニーズウイスキーとスコッチは、いったい何が違うのか。実はこの二つ、製法の骨格はよく似ている。だからこそ「どこが同じで、どこが決定的に違うのか」を押さえると、選び方も飲み比べも一気に面白くなる。この記事では、成り立ち・造り・味わい・ルール・価格の5つの角度から整理する。
ジャパニーズはスコッチを「手本」に生まれた
そもそもジャパニーズウイスキーは、スコッチを理想として始まった。1918年にスコットランドへ渡り蒸留を学んだ竹鶴政孝と、鳥井信治郎が手を組み、1923年に日本初の本格ウイスキー蒸溜所である山崎の建設が始まる。大麦を糖化・発酵させ、ポットスチルで蒸留し、オーク樽で数年寝かせる——この基本工程はスコッチとほぼ同じだ。つまり両者は「別系統の酒」ではなく、片方がもう片方を手本にした兄弟のような関係にある。
最大の違いは「多様性の作り方」
では何が決定的に違うのか。鍵は業界の構造にある。スコットランドには100を超えるモルト蒸溜所があり、各社は原酒を融通し合う昔ながらの慣習を持つ。ブレンダーは他社の樽も含めた膨大な原酒から選んで一本を組み立てられる。
対して日本では、サントリーとニッカのような大手同士が原酒を交換しない。そのため各社は、少ない蒸溜所の中で自前で多彩な原酒を造り分ける必要があった。山崎や白州が形の違うスチルを何種類も並べ、酵母・発酵時間・ピートの有無・樽を細かく変えるのはこのためだ。「一つの蒸溜所が多くの表情を持つ」という日本的なスタイルは、この事情から生まれている。
味わいの傾向とミズナラ
味は造り手ごとに幅があるので断定はできないが、傾向としてジャパニーズは繊細でクリーン、全体のバランスを重んじると評されることが多い。加えて日本固有のミズナラ樽が、白檀や伽羅を思わせる独特の香りを与える銘柄もある。とはいえ余市のように力強くピーティなジャパニーズもあれば、軽やかなスコッチもある。「日本=繊細、スコッチ=重厚」と単純に線を引けるわけではない。
このコラムの関連
次に読む

白州と駒ヶ岳は何が違うのか——同じ「駒ヶ岳」の麓に建つ二つの山の蒸溜所、16基と2基で分かれた道
甲斐駒ヶ岳の麓の白州と、木曽駒ヶ岳の麓のマルス駒ヶ岳。花崗岩の軟水、木の発酵槽とよく似た二つの山の蒸溜所は、規模・加熱・冷却・樽と熟成地で分かれた。設備から味の違いと選び方を整理する。

スペイサイドとハイランドの違い——スペイサイドは「ハイランドの中の産地」。グレンファークラスが「ハイランド」を名乗る理由と、味の傾向で選ぶ
スペイサイドとハイランドは並び立つ産地ではなく、ハイランドの中にスペイサイドの枠がある関係だ。スコッチウイスキー規則の線引き、ハイランドを名乗るスペイサイドの蒸溜所、味の傾向の違いと選び方を整理する。









