なぜグレンファークラスは6代の家族経営を貫き、「シェリーの名手」と呼ばれるのか——直火のスチルと、1950年代から眠る樽
派手な宣伝もなく、それでも通ほど棚に置くグレンファークラス。6代続く独立家族経営、直火のスチル、オロロソ樽への信頼、そして1950年代から眠る古酒——「シェリーの名手」と呼ばれる理由を読み解く。
ウイスキーを少し飲み進めると、決まって名前が挙がる蒸溜所がある。派手な広告も、奇抜なボトルもない。それでも「わかっている人ほど棚に置く」——それがグレンファークラスだ。なぜこの蒸溜所は、静かなのにこれほど厚く信頼されるのか。鍵は「変えなかったもの」の多さにある。
6代、ひとつの家族が守り続けた蒸溜所
グレンファークラスがスペイサイド、ベン・リンネスの麓に免許を得たのは1836年。転機は1865年、ジョン・グラントがこの蒸溜所を買い取ったときだ。以来160年余り、経営はグラント家の手を一度も離れていない。現在まで6代——当主の名は代々ジョンかジョージ——が受け継ぎ、いまも独立系の家族経営を貫く数少ない蒸溜所のひとつである。
大企業に買われれば資本は潤沢になるが、四半期ごとの数字にも追われる。家族経営のグレンファークラスは、そのプレッシャーから距離を置き、「良い樽を長く寝かせる」という当たり前を、当たり前のまま続けてこられた。後述する古酒の在庫も、この一貫した所有があってこそだ。
スペイサイド最大級、直火で炙るスチル
中身の個性を決めるのが蒸留だ。グレンファークラスの6基のポットスチルはスペイサイド最大級で、しかもいまや希少になった「直火焚き」を守っている(現在はガスバーナーで加熱)。
蒸気を巻いた配管で間接的に温める方式が主流になったのは、効率が良く焦げつきにくいからだ。だが直火は釜の底に局所的な高温を生み、香ばしくコクのある重い酒質をもたらすと言われる。手間のかかる古い方式をあえて残していること自体が、この蒸溜所の思想を物語る。

オロロソ・シェリー樽への、揺るがない信頼
グレンファークラスを語るうえで外せないのがシェリー樽だ。スペインのヘレスから運ばれるオロロソ・シェリーの樽を軸に熟成させ、干しぶどうやナッツ、チョコレートを思わせる濃厚で甘やかな味わいを生む。
良質なシェリー樽ほど数が限られ、価格も高い。それでも樽の質にこだわり続けられるのは、独立経営ゆえに方針をぶらさずにいられるからだ。ベン・リンネスの冷涼な気候と、ダンネージ式(石造りの低い熟成庫に樽を数段だけ積む方式)の落ち着いた環境も、ゆっくりとした熟成を助けている。
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