WHY THIS TASTE
1984年にエルマー・T・リーが世に出した、現代シングルバレル・バーボンの原点。高ライ麦のマッシュビル#2を、金属外壁で覆われたウェアハウスHで熟成させる。金属造りゆえ熱が伝わりやすく寒暖差の大きいこの倉庫の中央部から樽を選び、1樽ずつ93プルーフ(46.5度)で瓶詰めする。バニラとキャラメルの甘みにライ麦由来の胡椒のようなスパイスが重なり、樽ごとに表情が変わるのが単一樽ならでは。馬の栓は8種類。

この味を生む蒸留所
バッファロートレース蒸留所ケンタッキー州フランクフォート、オハイオ川に注ぐケンタッキー川のほとりに立つ、アメリカ最古級の稼働蒸留所である。かつてバッファローが川を渡った「けもの道(トレース)」に由来する名を持ち、1992年からサザラック社が所有する。同社は1999年に旗艦銘柄バッファロートレースを投入し、保存されてきた地の利・設備・熟成在庫を長期戦略の中核へと押し上げた。川岸に湧く石灰岩の泉水と、直径84インチという全米最大級の連続式蒸留器を擁し、基本3種のマッシュビルを使い分ける。パピー・ヴァン・ウィンクルやジョージ・T・スタッグなど、世界が熱狂するカルト銘柄を数多く生む聖地であり、バーボン愛好家にとって特別な巡礼地となっている。
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ブラントンBlanton's
1984年、バッファロートレース蒸溜所のマスターディスティラー、エルマー・T・リーが発売した世界初の近代的シングルバレル・バーボン。19世紀の同蒸溜所支配人アルバート・B・ブラントン大佐が来客用に倉庫Hから優良樽を手選りしていた伝統に着想を得た。6〜8年熟成で、馬と騎手をかたどった8種のボトルキャップは収集の対象としても人気が高い。現サゼラック・カンパニー傘下。
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同じ蒸溜所で同じ日に詰めた樽でも、熟成庫のどこに置かれたかで色も度数も味も変わる。上の階で度数が上がり下の階で下がる仕組み、中段の「ハニーバレル」、そして樽を動かす・平屋にする・そのまま瓶詰めするという造り手の三つの答えを追う。

「前に買ったときはもっと美味しかった気がする」。同じラベルの一本で起きるこの感覚を、造り手の側の事情(バッチ・樽・仕向地・年数表記)と、飲み手の側の条件(酸化・保存・グラス・体調)に切り分けて確かめる。

パピー、ブラントン、ウェラー、イーグルレア——憧れのバーボンの多くが、ケンタッキーのたった一つの蒸溜所から生まれる。その理由を、蒸溜所の歴史と「マッシュビルの造り分け」から読み解く。

バーで目を引く丸いボトルと馬の栓。ブラントンは見た目だけの酒ではなく、世界初のシングルバレルとしてバーボンの歴史を変えた一本だ。名の由来、栓の秘密、そして日本との深い縁を読み解く。

棚に並ぶ「カスク No.○○」と番号入りのボトル。シングルカスクはなぜ一本ごとに表情が異なり、売り切れれば二度と同じ味が手に入らないのか。混ぜて味を揃える通常の瓶詰めとの違い、樽ごとに個性が育つ仕組み、そして「一つの樽を味わう」文化の始まりまでを読み解く。