マッカラン vs 山崎——「シェリーの一本柱」と「多彩を束ねる」、二大“憧れ”シングルモルトはどう違う?
スコッチのマッカランと日本の山崎。二大「憧れ」のシングルモルトは、味の設計思想が対照的だ。生い立ち・造り・樽・味わいを並べ、「どちらが自分好みか」と最初の一本の選び方を整理する。
「いつかは飲んでみたい」と名前が挙がるシングルモルトの筆頭が、スコットランドのマッカランと、日本の山崎だ。どちらも入手が難しく、価格も上がり続けている二大「憧れの一本」。ところが両者は、名声の高さこそ似ていても、味の設計思想はほとんど正反対に近い。この記事では、生い立ち・造り・樽・味わいを並べて、「自分はどちらの世界が好みか」「最初の一本にどちらを選ぶか」を整理する。
生い立ち——1824年のスペイサイドと、1923年の日本初
マッカランは1824年、アレクサンダー・リードがスペイサイドに正式な蒸溜所として創業した名門だ。以来、良質なシェリー樽での熟成を軸に評価を高めてきた。現在の所有はエドリントン・グループ(日本での販売はサントリーが担う)。
山崎は1923年、寿屋(現サントリー)の鳥井信治郎が、竹鶴政孝を技師に迎えて建てた日本初のモルトウイスキー蒸溜所である。大阪と京都の府境にあたる山崎の地で、水に恵まれた環境のもと、日本の本格ウイスキーはここから始まった。
それぞれの物語はなぜマッカランは「シングルモルトのロールスロイス」と呼ばれるのか、なぜ山崎は「憧れのジャパニーズ」になったのかに詳しい。
造りの思想——「一点集中」か「多彩を束ねる」か
両者を分ける最大の違いは、味の作り方そのものにある。
マッカランは、業界でも最小級といわれる小さなポットスチルで、蒸留の中心部分だけをごく狭く取り出す(製品になるのはスピリッツのわずかとされる)。そうして生まれる重く濃い原酒を、こだわり抜いたシェリー樽で熟成させる。いわば「樽で決める」一点集中の造りだ。
山崎はむしろ逆で、形やサイズの異なる複数のポットスチル、複数の発酵槽・多彩な樽を一か所に揃え、性格の違う原酒を「造り分ける」ことで知られる。それらを組み合わせて、重層的な一杯に仕立てる。単一の蒸溜所でありながら、内側に小さな宇宙を抱えているようなイメージだ。
樽の違い——シェリー中心か、ミズナラを含む重ね技か
マッカランの根幹は、スペイン・ヘレスでシェリーを詰めて仕込んだオーク樽にある。伐採から樽詰めまで数年をかけて用意されるこの樽が、ドライフルーツやチョコレートを思わせる濃厚な甘みと、深い琥珀色を与える。
一方の山崎は、バーボン樽・シェリー樽に加え、日本原産のミズナラ樽を使うのが大きな個性だ。ミズナラは白檀や伽羅のような和の香りをもたらすことで知られる(→なぜミズナラ樽はウイスキーに白檀や伽羅のような香りを与えるのか)。複数の樽を掛け合わせることが、山崎ならではの華やかさと複雑さを生んでいる。
味わいの方向性
ざっくり言えば——マッカランは「シェリーの太い一本柱」。味の輪郭がはっきりしていて、ひと口で「これがマッカランだ」と分かる充実感がある。飲みごたえと余韻の深さが持ち味だ。
対して山崎は「多層的でフルーティ、そこに和のニュアンス」。いくつもの香りが折り重なり、時間とともに繊細に表情を変えていく。ちなみに山崎シングルモルト・シェリーカスク2013は、世界的に注目されるガイド『ウイスキー・バイブル2015』でその年の世界最高のウイスキーに選ばれ、ジャパニーズの実力を世界に印象づけた一本でもある。

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