
WHY THIS TASTE
モルトと未発芽大麦を混ぜたマッシュを銅のポットスチルで三回蒸留するアイリッシュ伝統のポットスチル原酒に、軽やかなグレーン原酒を合わせたブレンデッド。熟成の主体はエックスバーボン樽で、一部にシェリー樽を用いる。バーボン樽由来のバニラとナッツ、三回蒸留がもたらす軽快でなめらかな口当たりが、世界で最も売れるアイリッシュたるゆえんの飲みやすさを支えている。40度。

この味を生む蒸留所
ミドルトン蒸留所アイルランド南部コーク県ミドルトンに立つ、国内最大のウイスキー蒸留所である。1825年、マーフィー兄弟が旧毛織物工場を蒸留所へ改装したのが起源。1966年、ジョン・ジェムソン、ジョン・パワーズ、コーク・ディスティラーズの3社がアイリッシュ・ディスティラーズとして統合し、旧施設を閉じてミドルトンに集約する道を選んだ。1975年に新ミドルトン蒸留所が稼働し、ジェムソン、パワーズ、レッドブレスト、グリーンスポットなどが今やここで生まれる。アイルランド固有のシングルポットスチル製法——麦芽と未発芽大麦を合わせ、銅のポットスチルで3回蒸留する——の総本山であり、なめらかでスパイシーな独特の酒質を世界に届ける聖地だ。
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ジェムソンJameson
1780年創業、アイルランド最大の輸出ウイスキーブランド。ミドルトン蒸留所という単一拠点の中で、大麦麦芽と未発芽大麦を混ぜて三回蒸留するシングルポットスチルウイスキーと、コラムスチルで造るグレーンウイスキーを自社内で造り分け、両者をブレンドする。この「一つの蒸留所で全原料をまかなう」垂直統合体制こそが、アイリッシュウイスキーらしい丸みのある口当たりを支えている。
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無線の通話表で、Wは「ウイスキー」。かつてこの座は人名の「ウィリアム」のものだった。英語話者のための表が国際化するなかで酒の名が選ばれた理由を、選定を検証した1959年の報告書からたどる。

ウイスキーの語源はゲール語の「命の水」。だが英語の whisky に残っているのは「水」だけで、「命」は英語化の道中で落ちている。ヨーロッパ中が同じ名を訳して名乗った時代に、なぜこの一語だけが半分を失ったのか。

世界の販売数量ランキングを開くと、上位はインドの銘柄で埋まっている。ジョニーウォーカーの上に3本、同じ数字に1本。角瓶とトリスはどこにいるのか。2025年の実績から、ウイスキーの世界地図を数字で読み直す。

一杯で外国語が滑らかになる、という酒場の実感を、ドイツ語母語の学生50人を二群に分けて確かめた実験がある。2025年のイグ・ノーベル平和賞。上がったのは聞き手がつけた点だけで、話した本人の自己評価は動かなかった。

ハイボール一択になりがちなウイスキー。だが牛乳、紅茶、コーヒー、果汁、ビールと、割り材を変えるだけで一杯は別の酒になる。それぞれの黄金比と向く銘柄、そして「合う割り材」を自分で見当づける物差しを整理する。

世界2位のアイリッシュ、タラモアデュー。だが名前の由来である町の蒸溜所は1954年に火を落とし、2014年に生産が戻るまでの60年間、この酒はタラモアで造られていなかった。名前だけが生き延び、故郷へ帰るまでの物語。