メーカーズマーク vs ジムビーム——スーパーで見かける二大バーボン、「小麦」と「ライ麦」で分かれる味と選び方
同じ親会社(サントリー)を持つ二大バーボン。決定的な違いは、ライ麦を使うジムビームと、小麦を使う「ウィーテッド」なメーカーズマーク。原料と造りの違いから、度数・価格・味わい、価格差の理由、ハイボール向き・じっくり派それぞれの選び方までを整理する。
スーパーやコンビニのウイスキー棚で、必ずと言っていいほど隣り合って並ぶのがジムビームとメーカーズマークだ。どちらもアメリカ・ケンタッキー生まれのバーボンで、棚の上での距離はわずか数十センチ。ところが飲み比べると、その味わいは驚くほど対照的だ。
この記事では、二本の違いがどこから生まれるのかを「原料」「造り」「スペック」の三方向から解きほぐし、そのうえでハイボール派・じっくり派それぞれの選び方まで整理する。価格差の理由と、一段上のボトルへの進み方も最後に触れる。
じつは「同じ家」の二本
意外に思われるが、この二つは同じ親会社の兄弟ブランドだ。2014年にサントリーがバーボン大手のビーム社を買収し、以来ジムビームもメーカーズマークも同じグループの傘下にある。スピリッツ事業を担う会社の名も、2024年に「ビームサントリー」から「サントリー・グローバル・スピリッツ」へと変わった。つまり、日本の食卓に並ぶ二本のバーボンのオーナーは、いまや日本企業なのだ。
それでいて味の個性がここまで分かれているのは、造りの根っこにある「ある一つの選択」の違いによる。ただしその話に入る前に、二本が共有している土台のほうを先に押さえておきたい。
そもそもバーボンとは——二本に共通する土台
バーボンを名乗るには、アメリカの連邦規則で定められた条件を満たす必要がある。主なものは次のとおりだ。
- 原料の穀物のうち51%以上がトウモロコシであること
- 蒸留時のアルコール度数は160プルーフ(80%)以下
- 樽詰めは125プルーフ(62.5%)以下で、内側を焦がした新品のオーク樽に入れること
- 瓶詰めは80プルーフ(40%)以上
注目したいのは樽の条件だ。スコッチの多くが使い回した樽で熟成させるのに対し、バーボンは必ず新品の樽を使い、しかもその内側を火で焦がす(チャー)。焦げた層が濾過材のように働き、木から溶け出すバニラやキャラメルの甘い香りが、わずか数年でしっかり乗る。ジムビームの香ばしさも、メーカーズマークのとろりとした甘さも、この共通の土台の上に立っている。
さらに二本とも、ラベルには「ケンタッキー・ストレート・バーボン」と記されている。この「ストレート」を名乗るには、上の条件に加えて2年以上の熟成が必要になる。なお、色や香りを足す添加物は、そもそもバーボンを名乗る時点で認められていない。樽から出てきたそのままの味、というのが前提にあるわけだ。
言い換えれば、二本の違いは樽の「外側」ではなく、そこへ入れる中身——原料の配合で生まれている。
決定的な違いは「ライ麦か、小麦か」
トウモロコシが51%以上と決まっている以上、銘柄の個性を左右するのは残りの数割に何を混ぜるかだ。この穀物の配合を「マッシュビル」と呼ぶ。
ジムビームは、トウモロコシにライ麦と大麦麦芽を加えた、いわば王道のレシピ。ただしライ麦の比率は控えめ(約13%とされる)で、香ばしくドライな骨格に、ほのかなスパイスがのぞくバランス型だ。ライ麦は、焼きたてのライ麦パンを思わせる乾いた香りと、舌の上をピリッと走る刺激をもたらす穀物で、バーボンに「締まり」を与える役割を担っている。
対してメーカーズマークは、ライ麦を一切使わず、代わりに冬小麦を用いる「ウィーテッド・バーボン」。創業者ビル・サミュエルズ・シニアは、代々受け継いできたライ麦入りのレシピを燃やし、配合をゼロからやり直した。複数の候補をパンに焼いて味を比べ、ライ麦なしの一本を選んだという逸話で知られる。原料はトウモロコシ約70%・冬小麦16%・大麦麦芽14%とされ、小麦がもたらす丸くやわらかな甘さが最大の特徴だ。小麦はライ麦のような自己主張をしない穀物なので、その分トウモロコシと樽の甘さが前に出てくる。
つまり、ライ麦は味に「角」をつくり、小麦は「角を取る」。この一点の選択が、隣り合って並ぶ二本の性格をここまで分けている。

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