なぜニッカ「フロム・ザ・バレル」は世界を虜にしたのか——四角い小瓶に詰めた、樽出しに近い一杯
スーパーにも並ぶ四角い小瓶が、なぜ世界の愛好家を虜にするのか。加水を抑えたおよそ51度、マリッジ製法、佐藤卓のボトル、そして驚きのコスパ——ニッカ フロム・ザ・バレルが愛される理由を読み解く。
スーパーやコンビニの酒棚に、手のひらに収まる四角い小瓶が並んでいる。500mlで、値段も特別高くはない。ところがこの一本、ニッカ「フロム・ザ・バレル」は、世界のウイスキー愛好家から「小さな巨人」とも評され、長熟の名門ブレンデッドを差し置いて数々の栄冠を手にしてきた。なぜこれほど愛されるのか。答えは、その名前と製法、そして四角い瓶のなかに詰まっている。
「樽から」の名前が示すもの
フロム・ザ・バレルが発売されたのは1985年10月1日。名前を直訳すれば「樽から」。この一本の個性は、まさにそこにある。
一般的なブレンデッドウイスキーは、複数の原酒を混ぜ合わせたあと、飲みやすい度数まで水で割ってから瓶詰めする。度数はたいてい40%前後だ。ところがフロム・ザ・バレルは、加水を極限まで抑える。だから瓶詰めされたときの度数は、中身の実測でおよそ51.4度(ラベル表記は51度)。一般的なウイスキーよりずっと高い、樽出しに近い濃度のまま瓶に収められる。
さらに独特なのが「マリッジ(結婚)」と呼ばれる後熟だ。モルト原酒とグレーン原酒をブレンドしたのち、もう一度樽に戻して数か月ねかせる。こうして原酒どうしが深くなじみ、角の取れた濃密な一体感が生まれる。樽から取り出したそのままに近い、力強い香味——それが「フロム・ザ・バレル」という名の由来である。

口に含むと、まず高い度数の熱を感じるが、そのあとにバニラや蜂蜜、焼き菓子のような甘い余韻が長く続く。ロックや少量の加水で開かせると、香りがふわりと広がる。この「小さいのに濃い」ギャップこそ、多くの飲み手を沼に落としてきた。
佐藤卓がデザインした、四角い小瓶
フロム・ザ・バレルを語るうえで、あの独特のボトルは外せない。ずんぐりとした四角いガラス瓶をデザインしたのは、グラフィックデザイナーの佐藤卓。1984年に登場したニッカのピュアモルトシリーズと同じ思想でつくられた、無駄をそぎ落とした造形だ。
中身が凝縮されているように、瓶もまた凝縮されている。500mlという一見中途半端に見えるサイズも、濃い中身をきっちり味わうための器として妙にしっくりくる。棚に並んだときの存在感も相まって、このボトルは見た目で手に取りたくなる一本として世界中で親しまれてきた。
余市・宮城峡、そしてベン・ネヴィス
では、中身はどんな原酒でできているのか。フロム・ザ・バレルには、ニッカが誇る二つの蒸溜所——北海道・余市と宮城・宮城峡——のモルトが使われる。力強くピートの効いた余市と、華やかで軽快な宮城峡。個性の異なる原酒が、マリッジによって一つにまとまる。
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