なぜスコッチの銘柄名は「読めない」のか——ブナハーブン、カリラ、ラガヴーリン…ラベルに刻まれたゲール語の風景
ブナハーブン、カリラ、ブルックラディ——スコッチの銘柄名が読めないのは、英語ではなくゲール語だから。代表銘柄の名前の意味と読み方、あえて改名しない理由を、土地の風景とともに読み解く。
バーの棚の前で、銘柄名が読めずに注文をためらった経験はないだろうか。Bunnahabhain、Caol Ila、Bruichladdich——スコッチの棚には、学校で習った英語がまるで通用しない綴りが並んでいる。
じつは、読めなくて当然なのだ。これらの多くは英語ではない。この記事では、難読銘柄の正体である「ゲール語」の話を入り口に、代表的な銘柄名の意味と読み方、そして蒸留所があえて読みにくい名前を変えない理由を紹介する。読み終える頃には、あの呪文のような綴りが、土地の風景を描いた言葉に見えてくるはずだ。
読めないのは当然——あれは英語ではない
スコッチの難読銘柄の多くは、スコットランド・ゲール語に由来する。アイルランド語と同じケルト系の言語で、英語とは系統が違うため、英語の読み方の常識が通用しない。「bh」が「ヴ」の音になったり、綴りの一部をほとんど発音しなかったりする。
そもそも「ウイスキー(whisky)」という言葉自体、ゲール語で「命の水」を意味する「ウシュク・ベーハ(uisge beatha)」が英語に訛ったものだ。
そして銘柄名の大半は、蒸留所が建つ場所の「地名」をそのまま名乗ったもの。スコットランドの地名にはゲール語由来のものが多いから、ラベルの言葉も自然とゲール語になる。「グレン」で始まる銘柄が多い理由で紹介した「グレン(谷)」も、その代表例だ。
難読銘柄の宝庫、アイラ島——名前は「島の地図」だった
ゲール語文化が色濃く残るアイラ島は、難読銘柄の宝庫だ。だが意味を知れば、名前はそのまま「島の地図」になる。
**カリラ(Caol Ila)**は、ゲール語で「アイラ海峡」。蒸留所は実際に、アイラ島と隣のジュラ島を隔てる海峡を見下ろすように建っている。
**ブナハーブン(Bunnahabhain)**は「川の河口」。マーガデイル川が海に注ぐ場所に蒸留所がある。ちなみにラインナップには「ステュウラーダー(Stiùireadair)=舵手」のように、ゲール語の名を冠したボトルが今もある。

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