なぜスコッチには「カラメル色素(E150a)」が加えられるのか
「琥珀色は樽熟成の証」——そう信じたくなるが、実は多くのスコッチには色調を整えるためのカラメル色素E150aが添加されている。なぜ添加が許され、なぜ表示されないのか。規制・目的・味への影響、そして「ナチュラルカラー」を貫く蒸留所の思想から読み解く。
グラスに注いだウイスキーの、深い琥珀色。私たちはそこに「長い樽熟成の証」を読み取ろうとする。だが、その色の一部が樽ではなく、あとから加えられた色素に由来するとしたら——。スコッチウイスキーの多くには、**E150a(プレーンカラメル、スピリッツカラメル)**と呼ばれる色素が添加されている。ブレンデッドだけでなく、シングルモルトにも珍しくない。なぜ、そしてどのように使われているのか。
唯一許された「添加物」
スコッチウイスキーの製造は、2009年のスコッチ・ウイスキー規則(SWR 2009)によって厳しく縛られている。原則として、水とスピリッツカラメル(E150a)以外の添加は認められていない。香料も、甘味料も、他の着色料も一切禁止だ。つまりE150aは、この禁欲的なカテゴリーにおいて例外的に許された唯一の添加物という特別な位置にある。
E150aは、糖類を管理下で加熱してつくる「クラスI(プレーンカラメル)」の色素で、アンモニウム化合物や亜硫酸塩を使わないタイプを指す。コーラなどに使われる別クラスのカラメルとは製法が異なる点に注意したい。
なぜ色を足すのか
最大の理由は色調の一貫性だ。ウイスキーの色は、樽の種類・使用回数・熟成庫の環境によって一樽ごとにばらつく。とりわけ膨大な原酒をブレンドする銘柄では、ボトルごと・出荷ロットごとの色の差を消し、消費者がいつ買っても同じ見た目になるようE150aで微調整する。
もう一つは市場心理だ。濃い色は「長熟でリッチ」という印象を与えやすく、淡い色は敬遠されがち——という送り手側の読みがある。もっとも、色の濃さと熟成年数や味の濃さは必ずしも一致しないため、この連想自体が一種の思い込みでもある。

Glenfarclas 105 Cask Strength
🏴 スコットランド ・ グレンファークラス蒸留所 ・ シングルモルト ・ NAS ・ 60%
味は変わるのか——分かれる評価
「E150aは風味に影響しない」というのが業界の公式見解だが、この点には諸説ある。カラメル色素は単体では強い苦味を持ち、添加量が多い場合にわずかな苦味や質感の変化を感じ取る、とする愛好家やテイスターの声は根強い。一方で通常の使用量ではブラインドで判別困難とする実験報告も多い。断定はできないが、「まったく無味無臭で無関係」と言い切るのも、「はっきり味を損なう」と決めつけるのも、どちらも行き過ぎというのが穏当なところだろう。
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