なぜ飛行機の補助金争いの報復に、シングルモルトが狙われたのか——1日100万ポンドを失った18か月と、税がゼロに戻っても棚の値段が動かない理由
2019年、米国はEUの航空機補助金への報復として、シングルモルトのスコッチに25%の関税をかけた。同じ棚のブレンデッドは対象外。2026年7月に税はゼロへ戻ったが、棚の値段はおそらく動かない。その理由をたどる。
2026年7月24日、アメリカに入る英国産ウイスキーの追加関税がゼロになった。ニュースとしてはすでに報じたとおりだが、この一行の裏には、ウイスキーとは縁もゆかりもない話から始まった7年近い回り道がある。
発端は、飛行機だった。
飛行機の補助金が、なぜウイスキーに落ちてきたのか
エアバスとボーイング。欧州と米国を代表する二つの航空機メーカーが、互いに「相手が受け取った政府の補助金は不当だ」とWTO(世界貿易機関)で争ってきた。提訴は2004年。20年以上続いてきた紛争である。
2019年10月2日、WTOの仲裁人がこの紛争の一方について、米国がEU側に対して年間75億ドル相当の報復措置をとれると認定した。同月14日にはWTOの紛争解決機関が正式に承認する。WTO史上最大の報復認可だった。
ここで問題になるのが、報復措置の仕組みだ。WTOが決めるのは「報復してよい金額の上限」であって、「どの品目にかけるか」ではない。品目のリストは、報復する側が上限の範囲で自由に組む。
だから、航空機とは何の関係もないフランスのワイン、イタリアのチーズ、スペインのオリーブオイル——そしてスコットランドのウイスキーが、飛行機の争いの報復リストに並んだ。
当時、英国はまだEU加盟国だった(離脱は2020年1月31日)。しかもエアバスへの補助金をめぐって名指しされた当事国は、フランス・ドイツ・スペイン・英国の4か国。スコットランドは、その一角として撃たれた側にいた。
なぜブレンデッドではなく、シングルモルトだったのか
2019年10月18日、25%の追加関税が発効する。対象になったのは、シングルモルトのスコッチウイスキー、北アイルランド産のシングルモルト、そしてスコッチウイスキーリキュールを含むリキュール・コーディアル類だった。
ブレンデッドスコッチは、対象に入らなかった。
同じスコットランドで造られ、同じ棚に並ぶのに、ラベルに「シングルモルト」とあるかどうかで扱いが割れたのである。

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