ワイルドターキー vs フォアローゼズ——同じ町の二軒が「1つのレシピ」と「10のレシピ」に分かれた理由
どちらもケンタッキー州ローレンスバーグ、車で10〜15分の距離にある二軒。それでも造りは正反対だ。バーボンのレシピを一つに絞るワイルドターキーと、10の原酒を混ぜ分けるフォアローゼズ。違いの理由と選び分けを整理する。
スーパーやディスカウントストアのバーボン棚で、たいてい近くに並んでいる二本がある。七面鳥のラベルのワイルドターキーと、四つのバラのフォアローゼズだ。
あまり知られていないが、この二つはケンタッキー州ローレンスバーグという同じ町で生まれている。車で10〜15分の距離。同じ石灰岩の地層に育まれた水を使い、トウモロコシを主原料にし、内側を焦がした新樽で寝かせる——守るルールも土地の条件もほとんど同じだ。それなのに、グラスに注ぐと受ける印象がまるで違う。
この記事では、その違いがどこから来るのかを「熟成庫のかたち」「レシピの数」「樽詰めの度数」という三つの具体で追いかけ、最後に、今夜どちらを買えばいいのかまで整理する。
同じ町の二軒が、正反対の設計を選んだ
ワイルドターキー蒸溜所は、ケンタッキー川を見下ろす丘の上に建つ。象徴的なのが7階建てのリックハウス(熟成庫)で、空調は入れていない。夏は上階が焼けるように暑くなり、冬は冷え込む。その寒暖差が樽の中の酒を木へ押し込み、また吐き出させる。同社は川沿いの本拠地のほか、車で40分ほど離れたキャンプ・ネルソンにも熟成庫群を持ち、庫や階による個性の差そのものを味の材料にしてきた。
フォアローゼズの蒸溜所も同じローレンスバーグにある。ただし熟成と瓶詰めは別の町コックスクリークで行われ、その熟成庫は平屋だ。公式は、多層式の熟成庫では上階と下階で最大30度(華氏。摂氏なら約17度)の温度差が生じるのに対し、平屋なら約8度(同・摂氏約4度)に収まる、と説明している。
片方は樽ごとの個性が大きく出る環境を選び、もう片方は樽ごとの差を小さくする環境を選んだ。この時点で、二社が目指しているものはもう違う。
ワイルドターキー——レシピは一つ、樽は強く焦がす
ワイルドターキーは穀物の配合(マッシュビル)を細かく公表していないが、トウモロコシ75%・ライ麦13%・大麦麦芽12%と広く伝えられている。重要なのは比率そのものより、バーボンについてはレシピを一つしか使わないことだ(ライウイスキー用には別の配合がある)。スタンダードも、101プルーフの8年も、レアブリードも、出発点の中身は同じ。違うのは熟成年数と度数、そしてどの樽を選ぶかである。
もう一つの特徴が、樽に詰めるときの度数(バレルエントリープルーフ)だ。バーボンは法律上125プルーフ(62.5%)以下で樽に入れる決まりで、大手の多くは上限近くで詰める。度数が高いほど、熟成後に水を足して規定の度数へ落とす余地が大きくなり、同じ一樽からより多くのボトルが取れるからだ。
対してワイルドターキーは、現在115プルーフ(57.5%)で樽詰めしている。樽に入れる時点であえて度数を抑えるぶん、熟成を終えたあとに足す水は少なくて済む。樽の中で出来上がった味を、あまり薄めずに瓶へ運ぶ造りといえる。
樽は「アリゲーターチャー」と呼ばれる、内側がワニ革のようにひび割れるまで強く焼いた新樽。日本のフラッグシップである8年(50.5%)の、あの濃いバニラとキャラメル、焦げた木のニュアンスは、ここから来ている。
そしてもう一つ。マスターディスティラーのジミー・ラッセルは1954年からこの蒸溜所に立ち、息子エディとの在職年数は合わせて100年を超える。同じレシピを何十年も守れたのは、守る人が代わらなかったからでもあるだろう。

このコラムの関連
関連するボトル


次に読む

バーボンの国が「シングルモルト」を定義した——2025年に決まったアメリカン・シングルモルトの中身と、スコッチとの三つの違い
2025年1月、アメリカで「アメリカン・シングルモルト」が正式なカテゴリーになった。何が決まったのか、スコッチのシングルモルトとどこが違うのか、そしてケンタッキー以外の州で麦を蒸留してきた造り手たちを紹介する。

スコッチの隣で造られる、イングランドとウェールズのウイスキー——ウェールズは2023年に名前を守り、イングランドは「シングルモルト」の一語で揉めている
スコットランドの隣にも、1世紀の空白から甦ったウイスキーの産地が二つある。ウェールズは2023年に英国初の蒸留酒GIを勝ち取り、イングランドは4年以上申請中のまま。争点は「シングルモルト」という一語の読み方だった。






