
WHY THIS TASTE
未発芽大麦を含むマッシュを銅のポットスチルで三回蒸留する、シングルポットスチルの代表格。エックスバーボン樽とオロロソシェリー樽で12年熟成し、40度で瓶詰めする。未発芽大麦がもたらすオイリーで粘性のある口当たり(ポットスチル特有のクリーミーさ)に、シェリー樽由来のドライフルーツとクリスマスケーキ的な甘苦さが重なる、この銘柄の基準となる一本。

この味を生む蒸留所
ミドルトン蒸留所アイルランド南部コーク県ミドルトンに立つ、国内最大のウイスキー蒸留所である。1825年、マーフィー兄弟が旧毛織物工場を蒸留所へ改装したのが起源。1966年、ジョン・ジェムソン、ジョン・パワーズ、コーク・ディスティラーズの3社がアイリッシュ・ディスティラーズとして統合し、旧施設を閉じてミドルトンに集約する道を選んだ。1975年に新ミドルトン蒸留所が稼働し、ジェムソン、パワーズ、レッドブレスト、グリーンスポットなどが今やここで生まれる。アイルランド固有のシングルポットスチル製法——麦芽と未発芽大麦を合わせ、銅のポットスチルで3回蒸留する——の総本山であり、なめらかでスパイシーな独特の酒質を世界に届ける聖地だ。
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レッドブレストRedbreast
アイルランドのアイリッシュ・ディスティラーズ(ペルノ・リカール傘下)が手がけるシングルポットスチル・アイリッシュウイスキー。名前は当時の販売元ギルビー社会長が愛したコマドリに由来する。原酒はジェムソンで知られるボウ・ストリート蒸溜所から供給され、1986年にアイリッシュ・ディスティラーズが商標を取得、1991年に再発売された。モルトと未モルト大麦を混ぜて仕込む伝統製法により、クリーミーで芳醇な味わいが特徴。
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アイリッシュの名品グリーンスポットの名は、蒸溜所でも人名でもなく、ダブリンのワイン商ミッチェル&サンが樽に塗った緑のペンキに由来するとされる。原酒を樽で買って寝かせた「ボンダー」の商いと、四つの点のうち一つだけが生き残った理由をたどる。

糖分ほぼゼロのウイスキーを「甘い」と感じさせるのは、主に樽から来る香り。新樽のバニラ、シェリー樽の干しぶどう、二つの樽を合わせた丸い甘さ——出どころ別の5本に、番外としてグレーンの軽い甘さを加えた6本を紹介する。

ウイスキーの瓶の隅にある「L」で始まる英数字。その正体はロットコードです。賞味期限を書かない酒だからこそ必要になる理由、愛好家が読み解く日付の型、並行輸入で削られる事情までをたどります。

ウイスキーの語源はゲール語の「命の水」。だが英語の whisky に残っているのは「水」だけで、「命」は英語化の道中で落ちている。ヨーロッパ中が同じ名を訳して名乗った時代に、なぜこの一語だけが半分を失ったのか。

1875年6月18日、ダブリンの下町リバティーズで約5,000樽の酒が燃えた。ミル通りの片側では幅60センチの火の川が400メートル以上続き、13人が命を落とす。だが誰一人、炎で死んだのではなかった。

アイルランドだけの造り「シングルポットスチル」を代表するレッドブレスト。一度は姿を消しながら甦ったこの銘柄が、なぜ愛好家に「王」と慕われるのか。造りと歴史からひもとく。