ダルモア vs グレンモーレンジィ——20キロ足らずの隣人は、なぜ正反対の味になったのか。蒸溜器と樽で比べる選び方
北ハイランドの隣り合う湾に立つ二つの蒸溜所。軽やかなグレンモーレンジィと濃厚なダルモアの違いを、背の高い蒸溜器・平らな頭の蒸溜器と、バーボン樽・シェリー樽の使い方から比べ、飲む場面での選び方まで整理する。
北ハイランドの東海岸に、海が陸へ深く食い込んだ二つの湾が並んでいる。北のドーノッホ湾に面した町テインにはグレンモーレンジィが、南のクロマティ湾に面した町アルネスにはダルモアがある。二つの蒸溜所は、直線で20キロにも満たない距離にある。
ところが、グラスの中身はほとんど正反対だ。グレンモーレンジィは軽やかで花のよう。ダルモアはオレンジマーマレードとチョコレートのように濃い。この記事では、ご近所の二つの蒸溜所がなぜここまで違うのかを「蒸溜器」と「樽」の二つから比べ、どちらを選べばいいかまでを整理する。
創業者はどちらも「マセソン」
始まりを見ると、二つはよく似ている。ダルモアは1839年にアレキサンダー・マセソンが創業し、1867年からはマッケンジー家が経営を担った。ボトルの牡鹿の紋章は、このマッケンジー家がもたらしたものだ。
グレンモーレンジィは1843年、ウィリアム・マセソンがテインの醸造所を改装して蒸溜を始めた。同じ姓だが、二人に血縁があったかどうかは、今回確認できた資料では分からなかった。
現在の持ち主は大きく異なる。グレンモーレンジィは2004年にLVMH(モエ・ヘネシー)の傘下に入った。ダルモアはホワイト&マッカイが所有し、同社は2014年にフィリピンのエンペラドール社に買収されている。
違い1: 蒸溜器——「背の高さ」と「平らな頭」
グレンモーレンジィの蒸溜器は、スコットランドでいちばん背が高い。銅の首だけで5.14メートルあり、首の高さは「大人のキリンほど」と表現される。
首が高いと、立ちのぼった蒸気のうち重い成分が途中で冷えて液体に戻り、釜へ落ちる。上までたどり着いて酒になるのは、軽い香りの成分が中心になる。この仕組みを「還流(リフラックス)」という。グレンモーレンジィの繊細さは、この還流の強さに負うところが大きいとされる。
ダルモアの蒸溜器は形が変わっている。初留釜(ウォッシュスチル)は、頭を平らに切り落としたような形で、白鳥の首のような曲がった首がない。蒸気は側面の出口から長く曲がりくねった管(ラインアーム)へ抜けていき、そのあいだに銅と触れ、一部は液体に戻る。再留釜(スピリットスチル)は、首のまわりに冷却水を流す「水のジャケット」をまとっている。首を冷やせば蒸気が液体に戻りやすくなるので、こちらも還流を増やすための工夫だ。
つまり、どちらも還流を重視している。ダルモアの濃さを蒸溜器の形だけで説明するのは難しく、味の差をより大きく分けているのは、次に見る樽のほうだ。蒸溜器の形と味の関係はスチルの形状と還流で詳しく解説している。
違い2: 樽——バーボン樽が土台か、シェリー樽が看板か
グレンモーレンジィの土台は、アメリカンオークのバーボン樽だ。定番の「オリジナル10年」は、バーボンを熟成させたあと、ウイスキーに初めて使う樽(ファーストフィル)と二度目に使う樽(セカンドフィル)だけで10年熟成させる。バニラや桃、柑橘を思わせる香りは、この樽と軽い原酒の組み合わせから生まれる。

Glenmorangie The Original 10 Year Old
🏴 スコットランド ・ グレンモーレンジィ蒸留所 ・ シングルモルト ・ 10年 ・ 40%
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