ブールヴァルディエの作り方——ネグローニのジンをバーボンに。1927年パリの一杯と、苦さを丸める比率の選び方
バーボン、カンパリ、スイートベルモットの3つで作るブールヴァルディエ。1927年のパリで初めて記録された一杯の由来から、原典1:1:1・IBA 3:2:2・2:1:1の比率の違い、ステアの手順、ベースのウイスキー選びまでを整理する。
バーのメニューで「ブールヴァルディエ」という名前を見かけたことはあるでしょうか。中身はバーボン(またはライ)、カンパリ、スイートベルモットの3つだけ。ジンで作れば有名なネグローニになる組み合わせを、ウイスキーに置き換えた一杯です。
ネグローニのほろ苦さが好きな人にも、「ネグローニは苦すぎる」と感じた人にも、試す価値があります。ウイスキーの甘みとコクが、カンパリの苦さを丸く受け止めてくれるからです。
この記事では、名前の由来になった1927年のパリの話から、家で作るときの比率、ステアのコツ、ベースのウイスキーの選び方までを順に整理します。
1927年、パリのアメリカ人が飲んでいた一杯
ブールヴァルディエが初めて活字になったのは、1927年に出版された『Barflies and Cocktails』です。著者はパリの「ハリーズ・ニューヨーク・バー」を営んでいたスコットランド人、ハリー・マッケルホーン。
ただし、この一杯は本のレシピ一覧には載っていません。常連客の一人で、パリの英字紙でコラムを書いていたアーサー・モスが寄せた章の中で、常連の名前と好みの一杯を紹介するくだりに登場します。
そこで「彼のブールヴァルディエ」として名前が挙がっているのが、アメリカ生まれの書き手アースキン・グウィン。ヴァンダービルト家の縁者とされる人物で、1927年から1932年までパリで発行された月刊誌『Boulevardier(ブールヴァルディエ)』の創刊者の一人でした。カクテルの名前は、この雑誌の誌名から来ています。
「ブールヴァルディエ」はフランス語で、パリの大通り(ブールヴァール)を遊び歩く洒落者のこと。禁酒法時代のアメリカを離れ、パリで飲んでいた人たちの気分がそのまま名前になったような一杯です。
なお、グウィン本人が考えたのか、マッケルホーンが彼のために作ったのかについては、資料によって書き方が分かれます。
約80年忘れられ、2000年代に戻ってきた
この一杯は、その後長く表舞台から消えていました。1927年から2007年まで、カクテルブックに登場した記録はほとんど見つかっていないとされます。
再び光を当てたのは、カクテル史研究家のテッド・ヘイ(通称ドクター・カクテル)です。2007年に米国のドリンク誌『Imbibe』で紹介し、のちに自著でもレシピを載せました。そこからバーテンダーのあいだで広まり、2010年代半ばには定番の仲間入りをしています。
そして2020年、国際バーテンダー協会(IBA)の公式カクテルリストで、クラシック枠の「The Unforgettables」に加えられました。
基本のレシピと、比率の選び方
IBAの公式レシピは次のとおりです。
- バーボンまたはライウイスキー:45ml
- カンパリ:30ml
- スイートベルモット(赤):30ml
- 飾り:オレンジピール(レモンピールでもよい)
比率にすると3:2:2。ウイスキーが少しだけ多い配合です。
じつは1927年の本に書かれていたのは、3つを同量ずつ合わせる1:1:1でした。ネグローニと同じ構成ですが、これだとカンパリの苦みと、ベルモットの甘さがかなり前に出ます。
現在よく見かける配合は、だいたい次の3つです。
- 1:1:1(原典):甘苦さが濃く、どっしりとした飲み口。ネグローニ好き向け。
- 3:2:2(IBA):ウイスキーの輪郭が見えはじめる、いちばんの基準。
- 2:1:1:ウイスキーが主役。苦みが控えめで、ネグローニが苦手だった人の入り口に。
迷ったら3:2:2から始めて、苦いと感じたら2:1:1へ、甘苦さが物足りなければ1:1:1へ寄せていくのがおすすめです。
作り方——シェイクではなくステア
材料がすべてお酒で、果汁も卵白も入らないため、シェイクではなくステア(混ぜる)で作ります。マンハッタンと同じ考え方です。
- ミキシンググラス(なければ大きめのグラス)に氷をたっぷり入れる
- ウイスキー、カンパリ、スイートベルモットを注ぐ
- バースプーンで静かに混ぜ、しっかり冷やす(20〜30回ほどが目安)
- 冷やしておいたカクテルグラスに、氷を残して注ぐ
- オレンジピールをグラスの上で軽く絞って香りを散らし、そのまま添える
カクテルグラスで出すのがIBAの形ですが、大きな氷を入れたロックグラスで出すスタイルも広く見られます。ロックにすると、ゆっくり飲むうちに氷がとけて苦みがほどけていくので、家で一杯を長く楽しむならこちらも向いています。
氷についてはロックの作り方や透明な氷の作り方もあわせてどうぞ。
ベースのウイスキーで、こう変わる
材料が3つしかないぶん、ウイスキーの個性はそのまま仕上がりに出ます。選び方の軸は「甘く丸めたいか、スパイスで引き締めたいか」です。
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