ライウイスキーとは——バーボンとの違い、スパイシーさの正体と、おすすめ8選
アメリカのライウイスキーは「ライ麦51%以上」が条件。バーボンとの違い、スパイシーさの正体、ケンタッキースタイル/ハイライ/カナダの100%ライという3タイプでの選び方と、おすすめ8本を紹介します。
バーの棚で、バーボンの隣にひっそり並んでいる「ライ(Rye)」と書かれたボトル。手に取ったことはなくても、あなたはすでにその味を知っているかもしれません。マンハッタンは古くからライで作られてきましたし、ニューオーリンズ生まれのサゼラックも、19世紀後半にコニャックからライへと持ち替えて定着したカクテルだからです。
甘くふくよかなバーボンに対して、ライは胡椒やハーブを思わせる、ぴりっと引き締まった味わい。この記事では、ライウイスキーとは何か(ルールと味の正体)、選ぶときに知っておきたい3つのタイプ、そしてタイプ別のおすすめ8本を紹介します。
ライウイスキーとは——「ライ麦51%以上」というルール
アメリカのライウイスキーは、法律(TTBの規定)でこう定められています。
- 原料のうちライ麦が51%以上
- 160プルーフ(80%)以下で蒸留する
- 内側を焦がした「新品」のオーク樽で熟成させる(樽入れは125プルーフ=62.5%以下)
- 40%以上でボトリングする
骨格はバーボンと同じで、違うのは主役の穀物だけ。バーボンが「トウモロコシ51%以上」なのに対し、ライは「ライ麦51%以上」です。さらに2年以上熟成させ、添加物を加えないものだけが「ストレートライ」を名乗れます。
つまりバーボンとライは、兄弟のようなルールを持つ別の酒。バーボン側の話はなぜバーボンはあんなに甘く感じるのかで詳しく書きました。
なお、これはあくまでアメリカの規定です。カナダのウイスキーは新樽義務もライ麦比率の要件もなく、まったく別のルールで造られます(後述)。
スパイシーさの正体は、ライ麦そのもの
ライウイスキーを一口飲んだときに立ち上がる、黒胡椒のような刺激、ミントやディルのような青いハーブ感、そしてライ麦パンを思わせる香ばしいドライさ。この骨格は樽ではなく、原料のライ麦そのものが持ち込んでいます。
同じ新樽で熟成させても、トウモロコシ主体なら甘く丸く、ライ麦主体ならスパイシーで硬質になる。穀物が味の設計図の第一歩だという話はなぜウイスキーは大麦だけでなく、トウモロコシやライ麦からも造られるのかに譲りますが、ライウイスキーはその原理がもっとも分かりやすく出た一杯だと言えます。
一度死に、カクテルとともに蘇った酒
じつはライは、アメリカで最初に主役だったウイスキーです。18世紀後半、ペンシルベニアやメリーランドに渡った移民たちにとって、痩せた土地でも育つライ麦は頼れる作物でした。19世紀の東部のバーで飲まれていた「ウイスキー」は、多くがライだったのです。
流れを変えたのが禁酒法(1920〜33年)でした。産業は壊滅し、人々の舌はより軽く甘い酒に慣れていきます。禁酒法が解かれたあともライは戻ってこず、その後70年以上、「時代遅れの酒」として棚の隅に置かれ続けました。
再び光が当たったのは2000年代以降。バーテンダーたちが禁酒法以前の古典カクテルを掘り起こしたとき、そのレシピが求めていたのがライだったのです。米国蒸留酒協議会(DISCUS)によれば、アメリカのライの販売数量は2009年の約8.8万ケースから、2019年には約120万ケースへ——10年でおよそ14倍に膨らみました。流行が一周して、原典が戻ってきた。ライの復権は、そういう物語です。
選び方——3つのタイプで整理する
ひとくちにライと言っても、味の幅は驚くほど広い。業界の公式な分類ではありませんが、本記事では次の3タイプで整理します(マッシュビル=原料配合を公表しない銘柄も多く、比率は「おおよそ」で捉えるのが現実的です)。
① ケンタッキースタイル(ライ麦51%前後) — 残りはトウモロコシと大麦麦芽。バーボンの甘さを残したままスパイスが乗る、いわば「スパイシーなバーボン」。ライの入口に向くタイプです。
② ハイライ(high rye=ライ麦比率の高いタイプ。95%前後) — スパイスとハーブが前面に出る、輪郭のはっきりした味わい。インディアナ州のMGP蒸留所が造る95%ライの原酒を多くのブランドが使っており、この系統の味を広めました。
③ カナダの100%ライ — カナダでは歴史的な慣習として、ウイスキー全般を「ライ」と呼びます(本来はライ麦比率と無関係の呼び名です)。ただし本当にライ麦100%で仕込む実力派も存在し、アメリカのライとはまた違う、軽やかで穀物感のある表情を見せます。
タイプ別・ライウイスキーのおすすめ8選
① ケンタッキースタイル——バーボン寄りの入口
このタイプの中でも穏やかなのがサゼラック・ライ(45%)。バッファロートレース蒸留所が造る一本で、原料配合は非公表ながらライ麦比率は低めとされ、甘みとスパイスのバランスがよく、ライの入口としてもっとも扱いやすい味わいです。以下の3本は100プルーフ級で、同じ系統でもぐっと骨太になります。
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