飲み終えたウイスキーの空き瓶は、どうするのが正解か——40万円台で出品される「山崎25年の空瓶」と、資源に出すときの実務
飲み終えた瓶をどうするか。フリマサイトでは希少銘柄の空き瓶が数十万円で出品され、その一部は中身を入れ替える材料になる。売る側・出す側の法的な線引きと、買う側の自衛、そして資源として出すときの実務をまとめた。
棚に、飲み終えたボトルが並んでいる。ラベルはきれいなまま、キャップも残っている。捨てるのが惜しくて、そのままになっている——ウイスキーを飲む人なら、たいてい心当たりがあると思う。
「空き瓶をどうするか」という問いは、たいてい「飾るか、捨てるか」の二択で考えられている。そこに、あまり意識されないもうひとつの問いがある。手放した自分の空き瓶が、他人に何をされるか、という話だ。
この記事は、その三つ目を先に押さえたうえで、資源として出すときの実務までを扱う。
フリマサイトには、中身の入っていない瓶が並んでいる
フリマアプリで「空き瓶」を検索すると、ウイスキーのものが大量に出てくる。しかも、安くない。
ビジネスジャーナルが2024年12月に掲載した調査記事によれば、メルカリではサントリー「山崎25年」の空き瓶が40〜50万円台、「マッカラン25年」が30万円台、「マッカラン1939年」が69万円、「ザ・グレンリベット34年」が20万円台、「響21年」「白州25年」が10万円台で出品されていた。1本だけのものから複数本セット、化粧箱つきまで、形はさまざまだという。
それでも数十万円の値札がつく。
なぜ、空の瓶に値段がつくのか
理由はひとつではない。
まっとうなほうから挙げると、単純に容れ物として魅力がある。長期熟成のウイスキーの瓶はガラスが厚く、ラベルも凝っている。飾って眺める、照明を仕込む、一輪挿しにする——そういう用途で欲しい人は実際にいる。空になった樽が家具や燻製用チップとして次の仕事に回されていくのと、動機としては地続きだ。
問題はもうひとつの側にある。前掲の記事は、低いグレードの酒を中に入れ、ラベルどおりの品として売るケースが想定されると指摘している。この場合、価値があるのは瓶そのものではない。「本物の瓶と本物のラベルが、セットで手に入る」という事実のほうだ。
ジャパニーズウイスキーに偽造品が出回っている、という話とも噛み合う。サントリーのお客様センターには「オークションサイトで『山崎』『白州』『響』を購入しました。これは本物ですか?」という項目が立っており、同社は第三者を経由して入手した品が本物かどうかには回答せず、購入先や元の持ち主に尋ねてほしい、という対応を取っている。あわせて、ラベルやボトル、キャップ、箱といったパッケージの細部についても、偽造防止の観点から詳しい情報を公開していない。見分け方を細かく公開すれば、それはそのまま偽造する側のチェックリストになってしまうからだ。
希少ウイスキーの偽造がどう行われ、どう暴かれてきたかは、別の記事で詳しく扱っている。放射性炭素年代測定で正体が割れたマッカランの話は、ここでの話のまっすぐな延長線上にある。
「詰め替えて売る」は、どこで法律に触れるのか
ここは誤解されやすい。しかも、誰がやるかによって当たる法律がまったく違う。順番に分けて見ていきたい。
まず、空き瓶そのものを売る行為は、酒類の売買ではない。 中身が入っていない以上、それはガラス容器の取引であって、酒販免許の話にはならない。
個人が、詰め替えたものを売った場合
酒類販売業免許を受けずに酒類の販売業を行うことは酒税法第9条違反にあたり、同法第56条の罰則の対象になる、と国税庁は説明している。
ここで効いてくるのが「販売業」の定義だ。国税庁の通達は、酒類を継続的に販売することをいい、営利を目的とするかどうか、特定の相手か不特定の相手かを問わないとしている。重心は「継続」に置かれている。儲けるつもりがなくても、売る相手が友人や身内であっても、継続していれば販売業にあたる。逆に、家庭で不要になった一本を手放すような単発の取引は、ここには当たらない。
この線引きそのものは、飲まない一本を売ってもいいのかで詳しく扱っている。中身の入った瓶を手放すときの話だが、判断の軸は同じだ。
つまり、詰め替えたものを繰り返し売れば、酒税法の無免許販売の問題になる。一度きりなら、酒税法の側は動かない。ただし——ラベルと違う中身を売った時点で、別の法律が出てくる。それは後で触れる。
酒販店が詰め替えた場合
では、免許を持つ酒販店なら自由に詰め替えられるのかというと、これも違う。国税庁は、酒類販売業者等が仕入れた酒類を別の容器に小分けして売る行為を「詰め替え」と定義し、詰め替えを行う2日前までに、所轄の税務署長へ「酒類の詰替え届出書」を提出しなければならないとしている(根拠は酒税法第50条の2など)。届出だけでは終わらず、詰め替えた容器の見やすい場所に、販売業者の住所・氏名、詰め替えた場所、容器の容量、酒類の種類を表示する義務も生じる。
正規のルートで詰め替えるときには、「これは詰め替えたものです」と容器に書くところまでが手続きに含まれているわけだ。ラベルどおりの中身であるかのように装う行為は、この手続きの正反対を向いている。
飲食店が、店で注いだ場合
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